
山廣茂夫 著
四六版/344頁 口絵カラー16頁
定価:2900円+税
2024年1月6日発行
ISBN978-4-910793-06-1 C0071 2900E
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早見堯(美術評論家)推薦
「見えたとおりに描く」から始まる美術の基本的な疑問!を徹底究明!
この本は、ヨーロッパ絵画の「リアリズム」が、いつ頃どう誕生し、何をイメージソースにしながら表現として成立し、なぜ19世紀末に行き詰まったのか。ヨーロッパ絵画のリアリズム表現の得意なありようと本質的な矛盾を軸に、その成立と崩壊を追いかけたものです。(著者)
私たちが見ている世界と写真や映像の世界は別物と言っていいくらい違う。どうしてだろう。
陰影法や遠近法はヨーロッパだけの地域的で特殊な表現方法なのに、なぜ世界標準になったのか。
著者は、こうした見ている世界と表現された世界との大きな違い、そして、特殊な陰影法や遠近法が美術世界でどうして標準化されたのか、という二つの疑問を中心にして思考を進めていく。
*
もしかしたら、著者が本書を通してもっとも主張している隠された主題は、実は、自分の手(作品を制作する)と目(作品を見る)で考えること、そして、その時々で行く道をふさぐ疑問に、先入観や偏見、標準化された常識などを捨てて立ち向かえば、おのずから答えが得られ、道が開かれてくるということなのではないだろうか。
そういう態度が絵画や美術、そして、芸術を成り立たせている根拠なのだと示唆しているようだ。
早見堯(書評)より抜粋(全文掲載はこちら)

目 次
巻頭口絵 1 まえがき 19
第1章 見えたとおりに描く………………33
1 ものの変容 33
2 眼に映る世界と絵の違い 35
3 私たちがみているもの 38
第2章 認知と表現………………43
1 「関係の一致」と「意味」 43
2 先史時代と絵画の誕生 45
3 「ものがたり」と絵画 49
4 情報を共有する 54
第3章 見るという仕組み………………58
1 見えるようになるまで 58
2 「学習」に依存する認知 60
3 「網膜像」と「知覚像」 62
4 三次元のモノと写真・絵画 64
5 認識とイメージ 67
6 イメージの役割 68
7 知覚像と人間の眼 73
8 ギブソンの研究とその成果 75
8 見たものの再現は可能か 79
第4章 眼と写真………………82
1 恒常視 82
2 写真と肉眼の微妙な違い 86
3 肉眼と写真のコントラストの差 88
4 写真をもとにした絵画 92
5 ゴッホの絵に見る写真の視覚 96
6 写真と絵画 100
7 恒常視のきかない世界 103
第5章 絵画とリアリズム………………105
1 リアルの誘惑 105
2 さまざまなリアルのかたち 111
第6章 肖像のリアル………………115
1 写真的なイメージ 115
2 王の写真家ベラスケス 119
3 革命児カラバッジオ 124
4 カラバッジオの企業秘密 128
第7章 フランドルのリアリズム………………133
1 凸面鏡=新たなイメージソース 133
2 肖像画の革命 137
第8章 北方のイメージ、もう一つの源流………………143
1 異端者? ボッシュ 143
2 グリューネワルトの宗教的パトス 148
3 フェイクの彫像 151
第9章 古代ギリシアと「トーン」の発見………………155
1 古代ギリシアのレリーフ 155
2 見方の革命=トーンで見る 158
3 古代のリアリズム=ミイラの肖像画 162
4 キリスト教の帝国ビザンチン 167
5 イコノクラスムとイコン 170
6 絵画のミッシングリング 175
第10章 イタリアルネサンスの新たな視覚………………179
1 イタリアのルネサンスと古代ギリシア 179
2 ブルネレスキの欲しかった竣工予想図 184
3 画家たちにとっての遠近法 190
4 プロト遠近法 196
5 イメージソースとしての古代彫刻 200
6 ルネサンスと教皇庁 205
第11章 紙の普及と写生の誕生………………209
1 製紙技術の広がりと写生 209
2 写生と肖像画 215
第12章 印刷革命と陰影法の普及………………220
1 陰影表現と新たなメディア・銅版画 220
2 北方ドイツの腐食銅版画とイタリア 224
第13章 宗教改革とネーデルラント………………230
1 オランダとスペイン領ネーデルラント 230
2 ちょっとピンボケ、フェルメールの絵画 235
3 謎のルーベンス作品 238
4 イリュージョニズムとヨーロッパ絵画 244
第14章 東洋の絵画とヨーロッパ………………249
1 中国の絵画 249
2 江戸時代の日本とヨーロッパ 256
3 浮世絵の中のヨーロッパ 261
4 江戸のポップアート 265
5 広重の近代性 270
第15章 フランスのアカデミーと権威主義………………273
1 リアリズムが失ったもの 273
2 フランスの台頭と王立アカデミー 278
3 アカデミーとエコール・デ・ボザール 281
4 反逆児クールベ 286
5 クールベの戦闘的「レアリスム」 290
6 人物の平板化と写真の影響 293
第16章 印象派とリアリズムの陥穽………………297
1 ルノアールの成功と挫折 297
2 モネの連作《積み藁》とその後 302
第17章 セザンヌと遠近法………………308
1 セザンヌの感じた秩序と緊密な関係 308
2 水浴図とセザンヌ 314
第18章 リアリズムを越えて………………319
1 二十世紀の絵画とカメラの映像 319
第19章 美術の現在………………325
1 現代の美術 325
2 美術の面白さをどう伝えてゆくか 327
《資料 フランス革命期の絵画と写真》 335 あとがき 338