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編著 畑島喜久生(はたじま・きくお)画 青木健真(あおき・けんしん)
発行:風人社
本体定価(1300円+税)
B5変形版/上製本/132頁
1989年11月1日発行
ISBN978-4-938643-01-0 C8336
戦前から現代までの、子どもたちの呟きが率直につづられた詩、60編に、挿画を添える。
「非常時」「防空訓練」「債券」「原爆」…など、子どもの目で見た時代の証言。 自らも長崎で被爆した体験を持つ小学校長の編・解説。
著者紹介
畑島喜久生(はたじま・きくお)
1930年(昭和5)長崎県生まれ。長崎師範学校・國學院大學文学部卒業。
15歳のとき、長崎西浦上で原子爆弾被爆。1949年から教職につき、児童詩教育に力を注ぐ。日本の児童詩教育の興隆をねがって、「現代児童詩」誌を主宰し、現在に至る。一方、被爆体験への思いを核に現代史を書き、詩集『亡国』を著す。調布市立国領小学校校長(発行時)。日本児童文学者協会会員。著書は、詩集のほか、児童詩教育評論集、児童読み物など多数。
青木健真(あおき・けんしん)
1941年(昭和16)高知県生まれ。武蔵野美術大学卒業。1960年より自由美術展に毎年出品し、「鎮魂歌」シリーズなど、平和への想いを強く意識した作品を描く。また、郷里の高校および中学で教職についたのち、東京の小学校教諭となる。調布市立国領小学校教諭(発行時)。自由美術協会会員。
【平和シリーズ】と『まっかな花』
「平和の本をつくりたい」と言い出したのは、小学校の校長先生です。 子どもと親が、子どもと先生が、そして兄弟や友達と、人間のこと、社会のこと、日本や世界のこと、歴史のこと、未来のこと……そして、戦争と平和のことを、いっしょに考えることのできる本をつくりたい、ということになりました。 それで本書は、戦中・戦後の子どもたちが書いた詩を集め、長崎での被爆体験を持つ校長先生が、自らの体験に重ね合わせた解説を書き、同じく平和をテーマにした画を描く画か・青木健真先生が、昔と今の子どもたちの顔を思い浮かべて本書の画を描きました。
本書の目次
まえがき
兵隊さん~戦争へ向かう時代の子ども 兵隊さん (5年)
こうちゃんはかたなみたいだよう~十五年戦争の時代
兵タイゴッコ/太平洋行進曲(海軍省選定)/日の丸行進曲 気をつけ(1年)/東郷げんすい(2年)/たんく(2年)/ 旗(5年)/ 夕方の旗(5年)/兄の出征(高等科1年)/ 先生の入営(3年)/ 非常時(作者不明)/軍用犬(3年)/英霊をむかえる日(4年)/ 遺骨むかえ(4年)/ 和田こう空兵そう(3年)/やすくにじんじゃ(3年)/ 大詔を拝して(学年不明)/神国日本(5年)/ 防空訓練(5年)/ 火鉢(5年)/ 無水アルコール(5年)/債権(6年)/産業戦死のおとうさん(4年)/草だんご(5年)
あめりか人~敗戦直後から復興へ
ちちをかえせ(峠三吉)/コレガ人間ナノデス(原民喜)
無題(5年)/せんそう(1年)/ひがい者(6年)/せんそう(5年)/あめりか人(1年)/パンパンむすめ(4年)/ 横浜線(中学2年)/お正月(5年)/停電(5年)/ぼくの家(3年)/るすばん(6年)/ くつ音(6年)/ さかなやのおばさん(5年)/じ(4年)/父(6年)/人間の馬(5年)/ ひめゆりの塔(6年)/ 「ひろしま」のえいが(4年)/中国から帰った竹内くん(6年)/春の海(6年)/どぶいた通 り(5年)/ 戦争(6年)/戦争の話(6年)/ 南せん・北せん(4年)/なぜなんだろう(6年)/ほうしゃのうの雨(3年)/ 水爆~第五福竜丸の映画を見て(学年不明)/ お父ちゃんが就職したんや(6年)
まっかな花~戦争と平和をみつめる子ども
夏草~中島飛行機製作所の廃墟にて(畑島喜久生)
まっかな花(6年)/あそびましょ(1年)/ゆきふり(1年)/ひるね(1年)/ ぼくのおとうさん(4年)/お母さんの木(5年)/八月六日(5年)/月(6年)/未来人(6年)/日記(6年)
解説
心打つ子どものペン(関英雄)
<まえがき>(本書より)
この『まっかな花』のなかには、敗戦を境にした、戦中と戦後のころの子どもの詩が集められています。
わたしたちの国は、いま(1989年現在)平和です。でも、44年前までは、世界を相手に戦っていたのです。そのときの戦争を「十五年戦争」とよんでいますが、ほんとうに十五年もの長い間、戦争をしつづけていたのです。もちろん、子どもたちの生活も、戦争一色にぬ りこめられてしまっていました。
そして、戦争に負けたのが、昭和二十年(1945年)。それはもう、口では言い表せないほどの、たいへんなできごとでした。それからの戦後のくらしぶりもまた、ひどいもの--食べるもの、着るものさえもありません。それより、戦争で受けた傷は、人々の心に深く残りました。
ですから、この本には、その戦中・戦後の子どもの生活のようすと、心の動きが、詩によってそのまま記録されています。
いま、わたしたちの国は、たしかに平和です。この平和は、どんなこといがあっも、守りぬ いていかなければなりません。そんなとき、いまある平和が、けっしてひとりでに生まれてきたものでないこと--それを、この『まっかな花』をとおして、みんなでいっしょにしっかりと考え合っていきたいのです。
![katana](http://www.fujinsha.co.jp/hontoni/wp-content/uploads/2014/03/katana.jpg)
「気をつけ」1年 志村清夫
せんせいが
「き を つけ」と いった。
こうちゃんは むねを はって
かたなみたい だよう。
お父ちゃんが就職したんや 6年 杉村柚子
いつも横目で通る
お菓子やさんへ
いっちょく線に走った
「うわー」
すごいいきおいで
おかき、おせん、チョコレートが
重なり合って ぶつかってきた
お父ちゃんが就職したんや
「いっぺんに寒なったな」
水ばなをすすって
よその人が通っている
うち、ほこほこしている
お母ちゃんもお酒のんだみたい
お父ちゃんが就職したんや
空がくもって
雨が降りそうに暗いのに
家の中が 百ワットの電球つけたようだ
お父ちゃんが就職したんや
![panpan](http://www.fujinsha.co.jp/hontoni/wp-content/uploads/2014/03/panpan.jpg)
パンパンむすめ 4年 小坂貴子
電車に乗った。
私の前に
パンパンむすめが、
あめりか人と
すわってしゃべっている。
よくきくと、えいごだ。
パンパンは、
あほじゃない。
「京都新聞」994年10月21日(水) 朝刊 16頁 「ホーム」