日本解剖学会 編
発行:風人社
仕様:四六判/並製本/240頁
定価:本体1,500円+税
装幀:高麗隆彦
1996年4月1日発行
ISBN9784-938643-14-0 C0047
本書の紹介
現代の解剖学者は、どんな研究をしているのか。87人の解剖学者が、その多岐にわたる研究内容を、「書き下ろし」で語る--人体の不思議! 巻頭講座=解剖学の展望・「人体の層」(佐藤達夫 東京医科歯科大学医学部長・解剖学第二講座教授)ほか、66項目を収録。図版多数。易しく読めるテーマから専門レベルまで、関心のある項目から拾い読める。医学生にはぜひ読んでほしい。
日本の解剖学会百周年記念事業のひとつとして、1995年9月15日から上野の国立科学博物館で開催されてきた「人体の世界」展は46万人の入場者を迎えて、63日間の日程を終えた。その会期中に会場内の小講堂では、解剖学会員によるミニ講演会が催され、そちらも毎回入場者を制限するほどの盛況であった。この本はその講演を聴けなかった人たちや、もっとたくさんの人たちのために、演者に講演内容を文章にまとめていただき、一般 書としたものである。
解剖学はいつのじだいになっても、医学の基礎のまた基礎であることには変わりないのであるが、とかく地味な学問であるので、日の目をみることもすくない。このミニ講演会は、日頃私たちが研究していることを広く一般 の人たちに知っていただく、またとないよい機会であった。 また、これだけたくさんの解剖学者が一般 の人たちに直接語りかけたことは、いまだかってなかったことである。
「え、解剖学にもまだ研究することが残っていたのですか」と、医者仲間から大真面 目できかれることも珍しくない。そんなときは、「人体の世界はそんなに小さいものではありませんよ」と答えることにしている。
この本の目次を見ただけでも、読者は解剖学の研究がこれほど多岐にわたっていることに驚かれるだろう。(本書「あとがき」より抜粋)
本書の目次
◆(巻頭講座)解剖学の展望◆
人体の層 …………………………………………… 佐藤達夫
◆ヒトのからだ◆
線描による人体構造の記録 ……………………… 千葉正司
下肢の構造と直立二足歩行 ……………………… 馬場悠男
人体構造から見た身体運動 ……………………… 加藤征
触れて理解する自分のからだ …………………… 竹内修二
不思議がいっぱいヒトのからだ ………………… 小泉政啓
あなたは胴長? 胴短? ………………………… 熊木克治
鮭缶で楽しめる解剖学 …………………………… 木田雅彦・堀口正治
人工神経開発の話 ………………………………… 平井圭一
生命の不思議 加齢・老化・寿命 ……………… 内野滋雄
魚や鶏にもへそはある! ………………………… 宮木孝昌
赤ちゃんのできるまで …………………………… 安田峯生
胎児の成長 ………………………………………… 三木明徳
人の体はどのようにできてくるのか …………… 橋本尚詞
なぜ肋骨は胸にしかないのか? ………………… 青山裕彦
ヒトの受精 ………………………………………… 永野俊雄
生殖細胞の分化 …………………………………… 永野俊雄
生殖細胞はどこから来るか ……………………… 藤本十四秋・受島敦美・宮山幸彦
脳と神経 脳のしわ(回転) …………………… 神谷敏郎
脳の進化 …………………………………………… 楠豊和
脳のふしぎ ………………………………………… 松本明
脳と神経細胞の形 ………………………………… 河田光博
「脳」の話 ………………………………………… 高木宏
引き寄せられる神経突起 ………………………… 佐藤真
扁桃体の自律神経経路 …………………………… 竹内義喜
脳室鏡の世界 臨床応用 ………………………… 岡一成
脳室鏡の世界 ……………………………………… 山鳥崇・上川秀士・乾明夫
神経内視鏡手術 …………………………………… 玉木紀彦・江口貴博
放射線の胎内被曝による脳の発達障害 ………… 井上稔・孫学智・早坂静・山村秀樹
◆歯と口◆
人の歯の由来 ……………………………………… 後藤仁敏
ヒトの歯と動物の歯 ……………………………… 小澤幸重
縄文時代人の虫歯 ………………………………… 藤田尚
走査電顕でみたミクロの世界 …………………… 小林寛
骨と歯の硬組織をつくる結晶 …………………… 寒河江登志郎・三島弘幸
咀嚼運動と歯の感覚 ……………………………… 重永凱男・吉田篤
歯を失うと骨をも失う …………………………… 井出吉信
丈夫な歯をつくるには …………………………… 三好作一郎
◆免疫とリンパ◆
免疫臓器と造血臓器のはなし …………………… 福本哲夫
免疫臓器の系統発生 ……………………………… 沢田知夫
24時間からだを守る ……………………………… 徳田信子
白血球の働き ……………………………………… 瀬口春道・小林俊博
人間を守るリンパ組織の知られざる世界 ……… 吉田淑子
リンパ系と健康 …………………………………… 早川敏之
組織と細胞 腸管の不思議 ……………………… 岩永敏彦
糖質の吸収と配分の分子機構 …………………… 高田邦昭
筋肉を顕微鏡で観察 ……………………………… 木村忠直
骨は生きている …………………………………… 小澤英浩
骨改造と血管網工 ………………………………… 岩久文彦
心臓の刺激伝導系 ………………………………… 島田達生
循環器の加齢変化 ………………………………… 河上牧夫・豊田智里・山下廣
ホルモン産生細胞の構造と機能 ………………… 小澤一史
細胞核 ……………………………………………… 東野義之・東野勢津子
細胞外のミクロの世界とコラーゲン蛋白質 …… 小林邦彦
細胞間の連絡通路「ギャップ結合」 …………… 柴田洋三郎
「化石小器官」ペルオキシゾーム ……………… 臼田信光
人組織微細構造の元素組成 ……………………… 高屋憲一
ヤツメウナギの眼 ………………………………… 外崎昭
ラジオオートグラフィーの話 …………………… 永田哲士
◆解剖学と文化◆
日本人の祖先 ……………………………………… 長島聖司
ポリネシア・クック諸島出土の古人骨 ………… 吉田俊爾
女王の顔 …………………………………………… 北條暉幸
容貌は表情筋がきめる? ………………………… 中村陽子・犬童文子・中川督之・原島博
解剖学データベース ……………………………… 増田弥生・本宮かをる・吉田穣・養老孟司
解剖学教育 ………………………………………… 河野邦雄
プラスティネーションについて ………………… 島田和幸
特別展「人体の世界」と日本解剖学会の百年 … 坂井建雄
あとがき ……………………………………………… 和氣健二郎
書評・紹介
「日本歯科新聞」1996年6月18日(火)「書評」
「東京新聞」夕刊1996年5月28日(火)4頁「ブック」
「毎日新聞」朝刊1996年5月20日(月)9頁「本と出会う-批評と紹介」
「東京新聞」夕刊1996年4月18日(木)4頁「各地の出版情報」
「京都新聞」(夕刊)1995年7月5日5頁「サイエンスガイド」
腸ホルモン研究で独創的な成果を挙げた解剖学者の藤田恒夫新潟大名誉教授の好エッセー集。台所があるという藤田研究室での昼食や朝食会の話から、ミトコンドリアのスープ、すい臓料理など読んでいて愉快になる。
著者は十数年、生命科学の総合誌「ミクロスコピア」の主催者として活躍しているが、その盛んな好奇心がよく表れている。
二十七年間、教授を務め、今春定年退官した新潟大医学部への愛着を込めながら、恩師や同僚、教え子らとの交流も書き込まれており、基礎医学者の生活と意気込みが分かる。