昔の暮らしを思い浮かべながらの街道歩き

みなさん、こんにちは。
毎年生きづらい夏・・・日本の夏はひょっとして世界一不快な暑さなのでは?!
みなさんも無理なく、且つスタミナつけて元気にお過ごしくださいね。

では、スケッチ紀行 今日からは6日目の行程その1
「江田駅」から田奈駅までの行程で、約半分弱「大難の辻」まで。
個人的には心くすぐられる途中の寄り道スポットに大はしゃぎでした。

*因みに、各スケッチはクリックすると拡大で見られますよ。

*ウォークマップ大山街道/江田駅ー荏田北遊水池ー小黒公園ー航空局施設ー市ヶ尾遺跡公園ー竹下地蔵堂ー庚申塔道標ー入定塚ー猿田坂ー旅籠綿屋ー大場川ー谷本(鶴見)川ー川間橋ー大難の辻

大山街道スケッチ紀行 14マップ

かなり興味津々な立ち寄りスポット!

「江田駅」からはいきなり二つのルートがあります。
田園都市線沿いの道へ行くか、西にむかって上がっていく道です。
さてどちらから行こうかと地図を見ると・・・ん?!「遺跡公園」
遺跡、古墳、遺構、城、暗渠などなどが大好きでもある私にとっては、ワクワクのスポットがあるじゃないですか!
これは、もう迷わず行くしかありませんね。

ということで、西に上がる(先のスケッチMAPでは・・・・のルートを行きます。

大山街道 江田駅付近

ゆるやかですが、それなりの勾配の道を「荏田北遊水池」を左に見ながら進みます。
遊水池とは、洪水の際 防災のための水を導くところ。河川の流水を一時的に貯留するわけですね。

しばらく上がると右側に見えてくるのが「小黒公園」
桜が見どころのようで、春には花見を楽しむ人々で賑わうでしょう。
それにしてもこの辺りの家々は、長い階段を更に上って・・・っていうところに建っているので本当に大変、高齢者には応えます。
大きくて頑丈そうな建物が多い気がしますけれど、これも地盤の起伏が関係しているのでしょうか。

「小黒公園」は、アスレチック遊具などもあり親子連れに人気のある公園のようです。
緑と季節の花々に囲まれた憩の場所に違いありませんね。

そのまま上がっていくと、この付近の最高点にあたる「航空局施設」です。
近づいてみると、すでに施設はなく無人で広がる緑の丘と鉄柵があるばかり。
今は国交省東京管理局管理になっているみたいで、もちろん立ち入り禁止。
ここの標高は81.73mと「ホントに歩く大山街道」には出ていました。見渡せば、なかなかの眺望。
晴れていれば奥多摩や秩父などが見られるようです。
あぁ、風が気持ちいい!

大山街道 航空施設局

またここには、荏田三等三角点がある場所でもあります。
三角点とは、山の頂上や見晴らしの良いところ、利用や保全に適した公共施設敷地内に設置され緯度経度が正確に求められるものですが、その三等となると1辺の長さが平均4kmほどの三角網ということになります(等級が下がるほど辺の長さが短くなる)。

てっぺんから来た道を下っていくと、お目当ての寄り道スポットがあります。
はい、やってきました!!
今日の立ち寄りスポットで楽しみにしていた「市ヶ尾遺跡公園」

先に言ってしまいますが、想像していたよりはるかに大規模だったことが 更に楽しさを倍増することになりましたっ!
6世紀後半から7世紀後半「古墳時代」末期に造られたものだと解説版にあります。
当時の有力農民の墓だろうとのこと。内部見学が出来る横穴式古墳があるのも魅力ですが、とにかく数が多いのです。A群B群に分かれて、それぞれ12基、7基。
内部の造りもそのつくられた年代によっていろいろあるようで、いやぁこれはおもしろい!!
おまけに、広場からは刀や土器などが発見され、祖先の霊を祀る儀式などが行われていたようなのです。

大山街道 市が尾遺跡公園
大山街道 市が尾遺跡公園

高台からの眺めも非常に良く、大山の姿がドンドン近くなってきたことも実感できます。

大山街道 広場からの眺め

そんなわけで、しばし古代浪漫を楽しみましたが、そろそろ街道の旅へと戻りましょう。
ちょっと名残惜しいのですが、今日はまだまだ始まったばかり。

実を言うと、先ほどの・・・・ルートからちょっと道を間違え、谷底に当たる「地蔵堂」へ先に着いてしまい、逆にエッチラオッチラと上って「航空局施設」に行きつきました。
ですからこのスケッチにある大山を望む階段は上って来たことになります。
ルート通りなら、階段の上に来て下りながら大山を眺めることになるのですが・・・。

大山街道 遺跡公園横の階段

だから、スケッチメモにあるように 振り向いての絶景がご褒美というわけです。

ちょっと順番が違うので、ややこしくなってごめんなさい!ですが
「市ヶ尾遺跡公園」を下っていくと、これからご案内する「竹下地蔵堂」
現地歩きでは、「竹下地蔵堂」などを先に見てから「航空局施設」まで上っていったというわけです。

大山街道 地蔵堂下交差点

雰囲気のある地蔵堂下交差点の横断歩道前が「竹下地蔵堂」です。
階段下にたくさんの石造物があり、その中に庚申塔があります。
真宗の寺で江戸中期に建てられたそうですが、千日の托鉢によって建立されたことから千日堂とも言われているとか。

大山街道 竹下地蔵堂 入城塚

向かい側角にも、石造物が並んでいます。
こちらには、この先の「猿田坂」にあった「入定塚」の碑もあります。

「竹下地蔵堂」を後に、先へ進みましょう。
駐車場に沿って左側、緩い下り坂になっているのが「猿田坂」
なんだかおもしろい名前ですね。動物の猿が関係しているのかと思いきや、それよりその名前の「猿」「去る」にかけて、結婚した花嫁は通ってはいけないと言われていたようです。

街道歩きが楽しみのひとつに

大山街道 猿田坂

「猿田坂」大山街道の趣が残る道ですが、たった一本北側の(ほぼ平行)道は自動車の往来も激しく雑多な感じの坂道。あとから出来た道・・・現在の中心となる道ですが・・・なんとも妙な感じです。こちらができたことで、古き大山街道が残っているのだとも言えますね。

「猿田坂」を進むと十字路にぶつかりますが、この左側に建っているのが「旅籠綿屋」
1882年(明治15)から明治末期まで営んでいたらしいですが、建物がそのままあるのでちょっと興味深く眺めてしまいました。
たまたまその脇にある街道を進むとき、ちょうどそこのご主人らしき人とすれ違い、しきりに建物を見ている私たちににこやかな微笑みで声がけてくださいました。
なんだか嬉しいふれあいの一コマです。

大山街道 旅籠綿屋

大山街道を歩く人たちはたくさん居るでしょうけれど、偶然お目にかかってのひとときに、なんだかとても温かな気持ちに。二言三言交わしただけですが、こんなことが道行きの楽しさでもありますね。
「溝口宿」にも何軒か当時のままの店が残っていましたっけ。もちろん、もうそこで商売を営んではいませんが、いろいろと想像を巡らすことはできます。

大山街道  猿田坂

「旅籠綿屋」の脇道(大山街道)を行きながら、なにげに振り返ると・・・先ほどの「猿田坂」が見えます。
こういったことが、昔ながらの道を歩いて当時の景や歩いた人たちの思いに触れるひとときですね。
「ホントに歩く大山街道」でも書かれているとおり、この辺りは小さな宿場だったとか。
すでに全く当時の面影はありませんが、所々にその名残かな、関係者かなと建物の名称を見ながら進みます。

大山街道 大難の辻 谷本川

田園都市線「市ヶ尾駅」から小田急線「柿生」を結ぶこの界隈は、どんどん道が新しくなりその都度周りの風景も変わっています。私も以前はR246に抜ける道としても車で走っていましたが、すっかり様子が違ってしまった気がします。

ここから小さな小川・「大場川」を越えて谷本川(鶴見川)に来ました。
ここに架かる橋が「川間橋」。この橋を架けた人にあやかった名前だそうですが、なんと利用するには三文を渡り賃として必要だったため、別名を三文橋と言うそう。
前回登場の渡辺崋山「游相日記」にも登場します。

さぁて、ここから今日ご案内するコースの終点「大難の辻」までは、ほんの一息。
二股Y字路が見えたら・・・はい、着きました。
今はそれほどでもありませんが、昔はかなりの急坂だったとかで、そのために大雨が降ると崩れた土砂がこの辺りまで流れてきたという難所だそうです。
昔は河川、坂、峠道・・・といろいろ大変なことがたくさんありましたから街道歩きも苦労が多かったでしょうね。

私たちは毎回寄り道しながら10km強の整備された道を歩きますが、昔は悪路で、しかもわらじを履いてですからねぇ。そんな状況でも、一日の行程は20km以上だったでしょうから、いやはや歩くしかないとはいえ、その困難が目に浮かびます。

こんな大山街道歩きでも、あちらこちらへ寄ったり、迷ったりしながら美味しいものを食したり、さまざまな楽しさをみつけたりできます。おかげさまで毎回の歩数は3万歩近くになります!
帰りの電車では疲れてヘロヘロでもありますが、無事に歩いてきた道を振り返りながら、ほくそ笑んだりもします。

というところで、今回のご案内は終わりです。
6日目の後半は、この「大難の辻」を越えてからまたアップダウン、「青葉台駅」を通って「田奈駅」へと向かいます。
美味しい食情報も出てきますから、お楽しみにね!

次回スケッチ紀行は6日目のその2。
だんだん、田園都市線沿線の終わりが近づいてきました。
大山も一段と大きくなってきましたし、さぁこれからも元気に行きましょう!
みなさんのご意見・ご感想もお待ちしています。

岡本和泉/Izumi Okamoto

さまざまな「デザイン」を通して、社会や地域、環境、食、観光、ものづくり、文化などをつなぎ 新たな展開をするプロデューサー&クリエイター。 2015年からは”暮らしのデザイン”の一部として、地域に密着し日々の楽しさを広げる 地域独自のイベントや企画、地域活動も手掛け、長年住む世田谷の文化や知的資源、 自然を活かした地域ツーリズムなども多く開催している。
http://www.imincosmos.com https://www.facebook.com/Setayui/

2022年8月、新たに合同会社Produce any Colour TaIZを設立。従来の企画デザインやプロデュース業などに加え、画像技術による画像処理分野に手を広げ、文化財や古い写真の修復・保存、天文写真再現、画像技術開発、講座なども展開する。
https://taiz.jp

【参考図書】
中平龍二郎著『ホントに歩く大山街道』(2007年、風人社)
改訂新版ウォークマップ『ホントに歩く大山街道』(2021年、風人社)
中平龍二郎+編集部著『キャーッ! 大山街道!!』(2011年、風人社)

ウォークマップ ホントに歩く大山街道
キャーッ! 大山街道!!