ついにやって来ました!赤坂御門から大山奥の院。刺激的な街道旅に感謝・感謝

みなさん、こんにちは。
寒さが戻ったせいで、今年のさくらは長く楽しめましたが今はすっかり新緑に覆われました。

さて、今回は「大山ケーブル駅」からいよいよ大山御本尊を目指しますよ。
往路は久しぶりのケーブルカーに乗り、下社から大山頂を目指して復路は「見晴台」経由で下社まで戻り、ケーブルカーには乗らず、「女坂」七不思議を辿りながら下山することにします。
今日で無事に完歩達成なるか?!元気にいきましょう。

*因みに、各スケッチはクリックすると拡大で見られますよ。

*ウォークマップ大山街道/大山ケーブルカー駅ー大山阿夫利神社下社ー登拝門ー夫婦杉ー十六丁目天狗の鼻突き岩ー富士見台(二十丁目)ー二十五丁目ー二十六丁目ー大山山頂ー奥の院ー見晴台ー二重滝ー女坂ー眼形石ー潮音洞ー無明橋ー大山寺ー逆さ菩提樹ー爪切り地蔵ー紅葉橋ー子育て地蔵ー弘法の水ー女坂入口ー大山ケーブル駅バスターミナル

やってきました、「大山ケーブルカー駅」です。
チケットは片道と往復がありますが、今回は片道を購入。往路は「女坂」をくだって七不思議を巡りながら行こうと思います。

ケーブルカーでグングン、駅も風景も楽しんじゃえ!

大山ケーブルカー、久々に乗るってことで、やや興奮気味です。
大山鋼索鐵道としてケーブルカーが開通したのは、1931年(昭和6)のことだったそうですからその歴史は結構古いものなんですね。その後不要不急線として一時廃止になりますが、大山観光株式会社が設立され大山観光電鉄株式会社に商号変更すると1965年(昭和40)7月11日にケーブルカーが再開、営業を開始します。
現在の車両は2代目、2015年(平成27)10月1日から走り続けています!
ケーブルカーの歴史や車両、動き方など、もっともっと話したいのですがキリがありませんのであしからず。

ゆっくりとは言え、グングン急勾配を登っていく力強さを感じながら、段々遠くまでみえる眺望も楽しみながらのケーブル旅。復路では乗らないので大いに味わいます!

中間の「大山寺駅」では複線になり昇降の車両とすれ違います。こういった車両がすれ違う場所に駅があるのは日本で唯一ここだけ!なんですって。斜面にある「大山寺駅」はホームも階段式。おまけにそれに習ってベンチも段差毎に並んでいるので、ちょっと愉快な風景です。

大山阿夫利神社下社

さぁ、ついに「大山阿夫利神社下社」に到着です。
改札を出て右サイドから見える眺望を楽しみつつ、左手を見ると霊験あらたかな大きな鳥居が出迎えてくれます。

2200年以上も前から大山に鎮座する関東総鎮護の霊山、「大山阿夫利神社」。雨乞いが最も有名かもしれませんが、心願成就や商売繁盛、社運隆盛などの御利益があるとされ、あらゆる人々の願いに寄り添い続けてきた悠久の歴史をもちます。
ずっと大山街道を歩きながら、ここに立つ日を思い描いていましたけれど、やはり関東のどこからもよくみえる大山の存在は、江戸時代当時の人たちにとって本当に大きな存在だったのだなぁと実感します。

山上によく霧や雲が生じたことから別名“あめふり山”とも呼ばれ、雨乞いや五穀豊穣の霊地として篤い信仰を受けました。山岳信仰の歴史も古く、祭祀に使われたとされる縄文土器が山頂から発掘されているのだとか。
江戸時代前後にかけて、石尊大権現の名と共に庶民からも崇敬を受け「大山詣り」が盛んになり、参詣道が大山街道として整備されたのもこの頃です。

大山詣りは、同じ信仰をもつ人たちで結成された“講”が主体となって行われていました。
浮世絵や落語などにも登場していますのでご存じかと思いますけれど、こぞって大山へ参詣したのですから、その熱気たるや凄まじいものだったでしょう。
あの木太刀を納める「納太刀」の風習もこの頃から行われるようになり、江戸庶民にとっては大山詣りをすることが粋とされ、一部の地域では大山へ登らないと大人とは認められないとまでになっていったそうです。
麓に並ぶ宿坊をみても、相当な数の参詣者がいたことは想像できますよね。

明治になって神仏分離令が発布されると、全国で神社と寺院を別とする動きが起こります。
これによって「阿夫利神社」「大山寺」も分けられ、現在の「大山阿夫利神社」の名称となりました。

関東大震災が起きた1923年(大正12)9月1日は、大山でも大きな被害を受けたようです。
大規模の山津波によって多くの家屋が濁流と共に流されましたが、この後 山内を流れる大山川が整備され、現在のまち並みへと変わっていったそうです。

1927年(昭和2)小田急線伊勢原駅が開業して、大山の新しい玄関口となります。途中不況や戦争等による弊害はありましたが、戦後の復興に伴い旅行や登山の流行に加え、1967年(昭和42)大山が国定公園に定められ、一段と多くの参詣者が来るようになり、1977年(昭和52)現在の下社拝殿が竣工しました。

そうそう、みなさんは下社社殿の地下にある「大山の名水 神水」をご存じでしたか。意外にお参りはしても、この地下の名水に気がつかない方がいらしゃっるのですよ。登山する前にこの名水を汲んでみてください。頂で湧かし美味しい珈琲を飲む参拝者も多いようです!

いざ、大山へ

名水を汲んだら、いよいよ大山の頂をめざし上社へ行きましょう。
大山へは入山祓所で身を清めて、「阿夫利神社」の脇にある「登拝門」から上がっていきます。

いきなり百段以上の、それもかなり急な石段を登るので、初っぱなから覚悟が必要です!
大山は1251mですが、いやいやなかなか侮れないのです。とにかく初めはかなり急で木の根っこや大きな石がゴロゴロした山道を行かなくてはなりません。
無理をせず、自分のペースで水分も摂りながら上がっていきましょう。

最初のポイントとなるのが「八丁目にある夫婦杉」。樹齢は約600年と言われる見事な大木です。

大きくてゴツゴツの石(段)を登っていく途中に牡丹岩という看板があって、牡丹の花のように花びらが幾重にもあるように見える岩に気づくと思います。
足下ばかりに気を取られていると危ないですから、ひとつひとつ石を踏みしめてゆっくり登りますが、その石のサイズがまちまちなため結構きつい登りになります。

すると、今度は丸い穴の空いた岩があります。これが「十六丁目の天狗の鼻突き岩」と名付けられていますがなんと、天狗が鼻で突いてあけた穴だと解説しています。こりゃぁ面白い!
霊験あらたかな山には、さまざまな話があるようです。

「十六丁目」はちょうど中間地点。
少し開けて、休憩できるベンチもあります。

もうちょっと頑張ると「二十丁目富士見台」に着き、連なる丹沢山系と見事な富士の景色が望めます。
江戸時代には茶屋があったといいますから、富士をむこうに遙かな絶景を楽しんだはず。
来迎谷とも呼ばれていたのは、西の富士方向に陽が沈みかかるとその光がまさに阿弥陀如来のご来迎という感じだったのでしょうか。

二十五丁目ヤビツ峠ルートとの合流地点を過ぎ、「二十八丁目の鳥居」が見えてきたらあともう一踏ん張り!
鳥居の先にあるお堂で参拝。ここまで来れば、山頂まであとわずかです。

この右下スケッチにある石段を上がれば山頂、「奥の院」大山頂上本社標高一二四七米と彫られた石標もあります。
ようやく達成です!!ここまでの旅の無事も感謝し、出会えたいろいろな楽しみにも感謝し、とにかくお参りです。しみじみと且つ熱いものを感じながら手を合わせました。

「奥の院」の回りにもランチを頂く参拝者が多く、みなさんホッと一息ついていますね。

山頂からの眺めが疲れを癒してくれるのは本当ですね。
頂きにある碑を見て、更に嬉しさがこみ上げてきます。あぁお腹が空きました!
今回のランチは、こま参道にオープンしたお弁当屋さん「TAWATAWA STAND」で買ったその名も“大山登山弁当”“山岳弁当”

オーナーさんが自分で育てた畑の無農薬野菜をたっぷり使った、彩り豊かでちょっと小洒落たお弁当です。ボリュームも満点でなかなかですよ。こんなランチも新しいスタイルかも!
もちろん、イートインもできます。

お腹も膨れ、絶景も堪能したところで下山の準備です。
復路はケーブルカーには乗らず「女坂」を行くので、体力を残しておかなければ!
登山は登りより下りの方が危険ですし、疲労もたまりますからね 気をつけて行きましょう。

クネクネした下山道を注意深く降りていくと、「見晴台」があります。かなり開けているところでちょうど良い休憩場所になっています。もちろんこちらからの眺めも抜群で、晴れていれば東京都心や横浜なども見えます。

そして、別名雨乞の滝と呼ばれる「二重滝」。今は水量が減りましたが、清涼感あふれる聖地です。
この滝付近がこま参道沿いやバス通り沿いを流れる鈴川(大山川)の源流です。

二十社を過ぎ10分ほど歩けば、「見晴台ハイキングコース入口」の看板があります。
ここから「見晴台」まで、ハイキングコースとして設定されていますので、そういった楽しみもありますね。

後ろ髪引かれつつの帰路

さぁ、「下社」まで戻ってきました。
ここから「男坂」「女坂」という2つのルートがあります。
「大山寺」へ寄るには「女坂」を行かないと着けませんし、「女坂の七不思議」を巡りながら下山するとしましょう。
因みに、「男坂」はかなりの急勾配の階段で、その段幅が狭く段差が大きいため、相当足(膝)にきます。左側は手すりも何もない崖っぷちですから、それも気をつけなければなりません。

本来は麓からの番号が付いているので、順番としては逆を辿ることになりますけれど気にせず行きますよ。

最初は「七 眼形石」
観音様がおられる下の石は、人の眼の形をしていると言われ、この石に触れてお祈りすると眼の病が治るとされています。

そして「六 潮音洞」
角形のほこらに近づき耳を澄ますと、はるか遠い潮騒が聞こえると言われています。

「女坂」と言えども、やはりクネクネ歩きにくい下り道ですので慎重に。ただこうやって“不思議”のいろいろを見ながら下るのも、なかなか楽しいものです。

「五 無明橋」が見えてくると、少し平坦な道にかわり、だいたい中間点くらいまで来たことになります。目指す「大山寺」も直ぐ。

「五 無明橋」はおしゃべりをしながら渡ると忘れ物や落とし物をするなど悪いことが起きると言われています。

そしてその先へ進むと道幅が狭くなって「大山寺」の本殿脇に通じるようになります。

「大山寺」は、755年(天平勝宝7) 東大寺別当良弁の開山、聖武天皇の勅願寺で、弘法大師 空海が第3住持を勤めた古刹です。
江戸時代以降は、高野山を頂点とする真言宗の学問の山として再整備され、現在も真言宗を宗旨としていると由緒にあります。ご本尊は鐵不動明王(重要文化財)で、2024年(令和6)再建の本堂が国登録有形文化財に指定されました。

秋の紅葉は見事ですよね。ライトアップもされ、小田急線の車内広告にもよく出ています。

続いて「四 逆さ菩提樹」
上が太くて下が細く逆さになっているような菩提樹で、今は2代目だとか。

「三 爪切り地蔵」
弘法大師様が一切の道具を使わす手の爪だけで、しかも一晩で彫刻されたと伝えられています。
それは、どんなことでも一心に集中して努力すれば実現できるという教えを意味するのだそうです。

「紅葉橋」を渡ると次にあるのが「二 子育て地蔵」です。
このいわれは、ちょっと怖い・・・このお地蔵様、最初は普通のお地蔵様が安置されていたが、いつからかお地蔵様の顔が子どもに変わっていたというのです。
それでもお祈りすると、子どもがスクスク育つのだとも。う〜ん、やっぱりちょっと怖い。

そして最後が「一 弘法の水」
弘法大師が杖の先で岩をチョンと突くと、岩が割れてそこから清水が湧き出したと伝えられているそうな。これは、なんだかありがたいですね。
下の湧水までは崖っぽくなっているので、水のところまで行く時は要注意です。

先ほどの「紅葉橋」の傍辺りから しばし、こんな石像がたくさん並んでいます。一体一体を見ていくとそれなりに表情がありますが、石碑だけのものもありました。どういう背景でこれほどまでに並んでいるのかはわかりませんが、夕暮れ時には少々不気味な気がしなくもないですね。

「女坂の入口」まで降りてきました。流石にちょっと膝が笑っていますが、無事に下山できました。
ここからは一気に、「大山ケーブル駅」のバス停迄歩みを進めます。今日はバスが恋しい!

バスターミナルから、改めて大山の方を振り返ってみました。
このシリーズ最後のスケッチは、バスターミナルとそこからの大山への風景をパノラマ式で描いてみました。
起点からここまで、多彩な表情を持った大山街道に親近感と懐かしさも加味しながら、しばしのお別れだと思うと淋しくもあります。

読者のみなさんにも長い間おつきあいをいただき、ありがとうございました!
そして何よりも、この紀行ブログの掲載にご協力いただきました「風人社」さんに感謝!お礼を申し上げます。

また今度、違う“道”でみなさんにお会いできたら嬉しいです。

そして既にお知らせをしていますが、川崎市大山街道ふるさと館企画展示室にて約3年に亘り連載してきました大山街道スケッチ紀行の展覧会を前後半の2回に分けて開催することになり、ただ今前編のスケッチ展が開催されています。
期日:4月19日(土)~6月10日(火) 講演:5月10日(土) 10:00〜12:00
お時間がありましたら、どうぞお立ち寄りください。
みなさまのお越しを心からお待ちしています。

それではまた、お会いしましょ。

➡企画展「岡本和泉 大山街道スケッチ紀行」前編@大山街道ふるさと館(4/19〜6/10)のご案内

岡本和泉/Izumi Okamoto

さまざまな「デザイン」を通して、社会や地域、環境、食、観光、ものづくり、文化などをつなぎ 新たな展開をするプロデューサー&クリエイター。 2015年からは”暮らしのデザイン”の一部として、地域に密着し日々の楽しさを広げる 地域独自のイベントや企画、地域活動も手掛け、長年住む世田谷の文化や知的資源、 自然を活かした地域ツーリズムなども多く開催している。
http://www.imincosmos.com https://www.facebook.com/Setayui/

2022年8月、新たに合同会社Produce any Colour TaIZを設立。従来の企画デザインやプロデュース業などに加え、画像技術による画像処理分野に手を広げ、文化財や古い写真の修復・保存、天文写真再現、画像技術開発、講座なども展開する。
https://taiz.jp

【以下の書籍とマップで歩いて描いています】
中平龍二郎著『ホントに歩く大山街道』(2007年、風人社)
改訂新版ウォークマップ『ホントに歩く大山街道』(2021年、風人社)
中平龍二郎+編集部著『キャーッ! 大山街道!!』(2011年、風人社)

画像に alt 属性が指定されていません。ファイル名: ooyamacv-108x150.jpg
ウォークマップ ホントに歩く大山街道
キャーッ! 大山街道!!