幻想的な大山の姿、田園都市線ともお別れ

みなさん、こんにちは。
今年もいよいよ残り少なってきました。
暗いニュースが多かった2023。来年はもっと明るくいい年になるように!

では、スケッチ紀行 7日目のその2。
「長津田宿」から「町田市辻」まで足を延ばし、新しくなった「南町田グランベリーパーク駅」から帰途へとなります。

*因みに、各スケッチはクリックすると拡大で見られますよ。

*ウォークマップ大山街道/大林寺ーお七稲荷ー王子神社ー福泉寺ー長津田常夜灯ー大石神社ー長津田小学校入口交差点ー旧道ー長津田交差点ー旧道ー至誠(陸軍殉職の碑)ー坂道の入口ー馬の背ー馬の瀬橋ーこうま公園ーFUKASAWAの看板ー道祖神と辻地蔵尊一ー里塚ー南町田グランベリーパーク駅

長津田宿のつづき

前回のつづきで「長津田宿」の中心エリアをもう少し巡りましょう。

駅南口入口の交差点を南下すると曹洞宗の「大林寺」が見えてきます。ここは長津田を治めていた江戸幕府旗本岡野家の菩提寺。市登録地域史跡になっている岡野家歴代の墓所があるほか、長津田十景「大林晩鐘」もあります。
住宅街に当然現れる大きな山門が目を惹きますよ。

駅からの通りをはさんで「大林寺」の右斜めにある小さな道へと入ります。

すると、マンションの入口横にある赤い鳥居のお稲荷さんに気づきます。
これがなんと、井原西鶴の“好色五人女”に取り上げられ有名になった八百屋お七を祀る「お七稲荷」
恋人に会いたい一心で放火事件を起こし死刑になるという、当時としてはかなり話題にのぼったストーリーですね。
初代岡野平兵衛房恒は家康の旗本となり、後代八百屋お七の捌きを行ったと言われています。

そして更に進むと、R246に出るところに「王子神社」があります。
1596年(慶長元年)創建の熊野新宮速玉大社の御分社で長い歴史と格式を宿す緑の神域です。

入口には横浜市の古木名木に指定されたご神木であるモミの大樹があります。
大正初期には鳥居をはさみ天を仰ぐように2本立っていましたが、右側のモミの樹勢が弱まり1972年(昭和47)に伐採し、現在は左側のみが残っています。その姿は本当に立派です。
2本健在だったら、相当な迫力だったでしょう。

さて、R246の向かい側に階段が見えます。
これが「大林寺」別当寺の「福泉寺」
但し、檀家がいない祈祷寺のため、明治維新後は別当職も失われた上、失火によって全焼。
そのため一時は衰退していたのですが、明治後半に山崎戒心という僧が近隣の信者の協力を得、現在に至るそうです。
ボケ封じ観音やポックリ大師など、多くの御利益を頂けるとして親しまれているそうですよ。

たくさん寄り道をしましたが、またここから本街道へと戻りましょう。

しばし緩い坂を進んでいくと、可愛らしく大きなクマさんに出会いました。
思わずホッコリな気持になってしまうのが「COVOLBA」

いろいろと盛り付けられて楽しさ満載のワンプレート・ランチが人気です。+100円で日替わりスープも。う〜ん、お腹がなるなる!

満足したので、先へと行きましょう。右に入る細い坂道(大石神社の参道)があります。
結構これが急坂で、ちょっと高齢者には無理?ではと思うほどですが、その途中に「長津田常夜灯」
先にご紹介した「石造物群」にもありましたね。あちらが下宿の常夜灯。そしてこの参道にあるのが上宿の常夜灯で、長津田宿には二基の常夜灯があったということです。

そのまま頑張って登ると、「大石神社」に着きます。
創建年代は不詳ですが、大きな石を神体として在原業平を祀り、武蔵国と相模国の国境に鎮座していたといいます。その後、当地に鎮座、1923年(大正12)に五月神明社、稲荷社を合祀したそうです。

西へと歩みを進めると「長津田小学校入口」の交差点。この右斜めに上がっていくのが旧道です。
いかにもという雰囲気を予測しながら緩いカーブに沿って行くと、小学校前で左へ入る未舗装の道に出くわします。
これはもう旧道に間違いありません。鬱蒼とした樹林の中、その旧道らしい雰囲気を味わいつつ歩きます。上ってきた坂は、石段で降りるようになっていますけれど、こんなひっそりとした旧道沿いになんと、小洒落た民家がありました!

石段を降りて右へ行くと、またすぐ石段です。南長津田団地「横浜田園都市病院」を左にみながら坂を上がっていきましょう。竹林が生い茂り木洩れ日がきれいです。
ちょっと長いけれど、そんな楽しみ方もみつけて一歩ずつ。街道の旅は続きます。

坂を上がりきればR246にぶつかる長津田交差点。これで「長津田宿」ともお別れです。

今日の終点、南町田へ・・・大山街道・田園都市線最後の駅

R246を渡り渋谷方面へ少し戻ります。
上り坂から長津田交差点に出ましたが、実際の大山街道はこの交差点より少し手前で抜けていたらしいと本書・ホントに歩く大山街道には説明があります。
戻った先に狭い道があるので、そこを入っていきます。すぐ傍にR246があるというのに、畑や農家があってとてものどかな風景が広がっています。

道なりに進むと、植物が生い茂っていたりでちょっとわかりにくいかもしれませんけれど「馬頭観音」があります。
そしてその曲がり角には「長林稲荷」

こんな道や風景が残っているのが、とても嬉しいですねぇ。
一瞬、時が戻ったような錯覚に陥るほどで、しばしお稲荷さんの階段に腰を下ろしてゆったりとおだやかな時間を味わいました。

「長林稲荷」を曲がるとR246が見えてきました。また車の往来が激しい道を先へと進みます。
目指すは「至誠」つくし野交差点前辺りにあるはずなのですが・・・う〜ん、見つからない。
以前はマクドナルド、今はGSになっていますが、大山街道Mapによるとその裏辺りなんですよね。
と、ここでしばし行ったり来たり・・・を繰り返すことに。
茂みの裏手に続く道にあるのか?と思って、そこを結構進んでみたり。R246で見落としたかしらとまた戻ったり。
いやはや、どうしてもわからずで、とうとうこの日は諦め調べ直すことにしました。
結局、GSの脇にある[茂み]の中にあるということが判り・・・スケッチには同じルート順に描いてありますけれど、実は次の大山街道歩きのときにもう一度朝一番にここへ寄って、しっかりとその存在を確認したのでした!!

まったく、なんてこった!!こんな所にあるなんて〜。
確認出来たからいいのですが、とんだハプニングでした。
「至誠(陸軍殉職の碑)」は、陸軍輜重兵曹長・小川勝美が公用中の事故で、自らを犠牲にして同僚を助けたことに対して旧陸軍士官学校の有志が立てたのだそうです。いきさつに触れたら、こんな茂みに隠れてしまって、いささか複雑な気持ちになりました。

当日は、この碑が見つからなかったのですけれど、ここで馴染みの店があるのでちょっと腹ごしらへ。
かなり遅いランチというか・・・をいただくことにしました。
つくし野交差点を入ったすぐ左側にある「びっくり寿司」
新鮮なネタと良心的なプライス、副菜も美味!なのでお気に入りの寿司屋なのです。

毎回いろいろなランチやおやつ?を食べますが、ランチ時にはビールも欠かせないアイテム。
これがまた、寿司とあうんですねぇ。
スポットが見つからずにグルグル探し回ってしまった分、余分に体力を使っちゃいましたしお腹も空くし、喉もカラカラ!
ってことで、今日は一段とビールがおいしいっ!!

さぁ、再びお腹も満足したところで南町田まであと少し。
先ほどのスケッチにあった「坂道の入口」「びっくり寿司」からR246に戻ってすぐ右側です。
つくし野交差点は、向かい側のGS辺り含めとても広くなっています。本来はあの迂回した田舎道風の旧道からR246を突っ切って、この坂道へと続くのでしょう。
また少し急な坂になりますが、上がっていくと思わぬ視界が開けます。この尾根道が「馬の背」

両側が切り立って馬の背中のようにみえることから「馬の背」と呼ばれるようになったのですが当時はどんな眺めだったでしょうか。
ちょうど太陽が傾きかけるころで、遠くの大山や丹沢山系を背景に“天使のはしご”が現れなんとも美しく、幻想的な風景となりました。
町田市街地に降り注ぐ陽光に、いいことがある!って予感です。

「馬の背」の坂を下り、R246へ戻ります。
崖の下を田園都市線が通っていて、すずかけ台駅になります。その駅へ向かう橋が「馬の瀬橋」、向かい側斜面には「こうま公園」です。

この橋の名前ですが、実際の橋には「馬の瀬橋」となっているのです。本書・ホントに歩く大山街道の解説でも「馬の瀬橋」。でも大山街道Mapでは「馬の背橋」なのですよね。
検索しても両方扱われていましたが、橋には「瀬」の字を使っているので、紀行ブログではこちらを使うことにしました。
スケッチやスケッチMapでは、それに気づく前でしたので「背」の表記をしています。ややこしくてごめんなさい!

さて、また少し上ってR246へ戻りましょう。そのまま進むと町田街道(R246は立体交差で上を走る)とぶつかるところが「町田辻」。古くは「長津田辻」と呼ばれていたそうですが、浜街道(絹の道)大山街道が交差する交通の要衝地です。
「FUKAKUSA」の看板を目印に左へ折れ最初の十字路を行くと、「道祖神と辻地蔵堂」があります。

1740年(元文5)、念仏供養や諸願成就を願って建立されたようでかなり崇敬されたと書かれています。どんな願いも聞いてくれる・・・なんて、ちょっと都合が良すぎる気もしますけれどね。

「町田辻バス停」を過ぎてR16を渡れば、終点の「南町田駅」も直ぐです。南町田駅周辺はここ数年で大きく開発されすっかり様変わりし、駅名も「南町田グランベリーパーク駅」と長くなりました。
以前グランベリーモールと言われていた商業施設が更に拡大し、隣接する鶴間公園や駅も含め、駅・公園・商業施設・ミュージアムなどが一体化した新しいまちになったのです。
個人的には以前の鶴間公園の方が自然のままでよかったですし、アウトレットもその程度の規模で充分だと思いますが・・・。

その駅に向かう前に、もうひとつ。「一里塚(鶴間の大塚)」へ寄りましょう。
鎌倉古道に面する広さ180㎡、高さ6mのお椀型で、詳細は諸説あるようです。頂きにあるのは御嶽講。明治の頃村人たちが火難盗難除けを祈ってつくったそうです。

今回はここまで。あ〜今日は普段以上に良く歩きました。
新しくなった「南町田グランベリーパーク駅」から帰るとしましょう。

次回スケッチ紀行は8日目のその1
町田市を抜けて「下鶴間宿」を目指します、お楽しみに!
みなさんのご意見・ご感想もお待ちしています。

岡本和泉/Izumi Okamoto

さまざまな「デザイン」を通して、社会や地域、環境、食、観光、ものづくり、文化などをつなぎ 新たな展開をするプロデューサー&クリエイター。 2015年からは”暮らしのデザイン”の一部として、地域に密着し日々の楽しさを広げる 地域独自のイベントや企画、地域活動も手掛け、長年住む世田谷の文化や知的資源、 自然を活かした地域ツーリズムなども多く開催している。
http://www.imincosmos.com https://www.facebook.com/Setayui/

2022年8月、新たに合同会社Produce any Colour TaIZを設立。従来の企画デザインやプロデュース業などに加え、画像技術による画像処理分野に手を広げ、文化財や古い写真の修復・保存、天文写真再現、画像技術開発、講座なども展開する。
https://taiz.jp

【参考図書】
中平龍二郎著『ホントに歩く大山街道』(2007年、風人社)
改訂新版ウォークマップ『ホントに歩く大山街道』(2021年、風人社)
中平龍二郎+編集部著『キャーッ! 大山街道!!』(2011年、風人社)

画像に alt 属性が指定されていません。ファイル名: ooyamacv-108x150.jpg
ウォークマップ ホントに歩く大山街道
キャーッ! 大山街道!!