総合出版・編集プロダクション「ホントに歩く」東海道・中山道

課外授業ようこそ先輩
瀬名秀明

別冊 課外授業ようこそ先輩
瀬名秀明
奇石博物館物語

NHK「課外授業ようこそ先輩」制作グループ+ KTC中央出版 編
仕様:四六判 上製本208頁
定価:本体1,400円+税
発行:KTC中央出版
装幀:後藤葉子(QUESTO)
2001年9月20日発行

番組名「博士になって小説を書こう」
2001年1月28日 NHK総合テレビ放送
授業の場=静岡県静岡市立西奈小学校

本書の紹介

面白いと思ったとき、
わたしたちはすでに学んでいる

そのとき目前に扉が現れる。「扉よ開け!」と自ら念じると、面白いと自分が思ったモノが、そのモノ自身のストーリーを語り始める。
本書は、瀬名さんと小学生たちがともにつくった奇石博物館物語である。

本書は、瀬名さんの小説『八月の博物館』と重なっています。子どもたちに伝えたい大きなテーマと実際の授業の具体的な作業が、明確な運びで展開されます。実際の教育現場にも大きな示唆を与えることができる気がします。
奇石博物館は、地球の歴史の物語を聞かせてくれるところだと言われています。コンニャクのように曲がるコンニャク石は、6億年前のものであったり、1センチのオパールができるのには50万年かかるのだそうです。
子どもたちは、たくさんの奇石のなかから自分が気に入った石を一つ選び、その石について博士になるぐらいに調べていく過程で、石の物語を聞き、そして創作していきます。

瀬名秀明(せな・ひであき)
小説家。1968年、静岡県生まれ。薬学を研究する科学者でもあり、その豊富な科学の知識に裏付けられた作品は、今までにない新しいSFやホラー小説として注目されている。
高校を卒業後、東北大学薬学部へ進学。その後大学院へと進んだ瀬名さんは、当時、研究していた「ミトコンドリア」を題材に、『パラサイト・イヴ』を執筆。一躍、人気作家の仲間入りをした。最先端の科学を題材に、長時間の下調べや綿密な取材を反映した作風の小説である。
『パラサイト・イヴ』は、約160万部のベストセラーになり、映画化、またコミックやゲームにもなった。

1995 『パラサイト・イヴ』で第2回日本ホラー小説大賞受賞
1996 東北大学大学院薬学研究科(博士課程)修了
1997 映画「パラサイト・イヴ」(監督・落合正幸、出演・三上博史、葉月里緒菜ほか)公開
『BRAIN VALLEY』(上下)刊行
1998 プレイステーションゲーム「parasite eve」発売
『BRAIN VALLEY』で第19回日本SF大賞受賞
1999 講演録『岩波高校生セミナー8 小説と科学』刊行
プレイステーションゲーム「parasite eve II」発売
2000 『八月の博物館』、『ミトコンドリアと生きる』(共著)刊行
2001 『ロボット21世紀』刊行
その他の作品に「Gene」(1996年 アンソロジー『ゆがんだ闇』所収) 『「神」に迫るサイエンス-BRAIN VALLEY研究序説-』(1998年 監修・共著) コミック版『パラサイト・イヴ』(1998年 作・しかくの) コミック版『parasite eve DIVA[N.Y.死の歌姫]』(1998~99年 作・藤貴紀子) 「ハル」(2000年 アンソロジー『2001』所収)などがある。
(2001年9月現在)

本書の目次

授業1 小説家と科学者と
子どものときの興味が大人になって生きる
石の博士になるために

授業2 奇石博物館を訪ねる(博物館案内も収載)
博物館も物語を語る
石たちのストーリーを聞く
奇石博物館からの招待状

授業3 石の博士になろう
博物館はどうしてできたか
学芸員に質問して学ぶ
奇石博物館の石たち (収蔵奇石の図鑑収載)

授業4 面白いことをいかに見せるか
見せ方を考えて、さらに調べる
子どもたちの想像博物館 (子どもたちの考えた博物館)

授業5 創作・石の物語 (博士になって書いたお話)
お話づくりの発表
瀬名秀明掌編「天狗の音色」(瀬名さんの創作短編)

瀬名秀明・ロングインタビュー (小学生時代、自作を語る、ほか)
本書からの抜粋
瀬名さんが子どもたちに宿題として出した、「興味を持った石を一つ選んで、その石の博士になって物語を書く」という課題を、子どもたちと同じように瀬名さん自身が書かれた掌編の一部を以下に載せます。
「天狗の音色」

博物館の中は、いつもどこか懐かしく、それでいてどこか奇妙で、独特の匂いがあります。
この「石の博物館」に入るなり、僕はやはりその匂いを感じました。ここを訪れたのは僕がまだ小学生の頃、もう二〇年以上も前のことですが、それでも以前に見たへんてこな石がまだケースの中に残っていました。柔らかく撓る「こんにゃく石」。下に置いた文字が浮き出てくる「テレビ石」。ひとつひとつ見てゆくと、西奈小学校に通っていたあの頃の記憶が蘇ってきます。不思議な感覚でした。あの頃と現在がねじれたタイムトンネルで繋がって、自分がその中をゆらゆらと漂っているような気分になるのです。きっと、博物館の展示品は、見ている人の記憶を知らないうちに吸い取って、自分の中に保管しておくのでしょう。そしてもう一度博物館を訪れた人にだけ、そっとその記憶を返してくれるのかもしれません。
そんなことを思いながら、僕は熱心に石をスケッチしている5年3組のみんなを残してテレビスタッフの人たちと廊下を抜け、博物館の入ロホールまで戻りました。カメラに向かって質問されたことを喋ってゆきます。
小説を書くことを仕事にしている僕は、20年前に卒業した地元の小学校の生徒たちと一緒に、富士山の麓にある石の博物館に来ているのです。奇石博物館、ともいわれるこの博物館に、僕は小学生の頃、一度だけ来たことがあります。世界中から集められた、奇妙で、綺麗で、面白い石たちが、小さな展示室いっぱいに並べられていました。「きせき」という言葉の響きもどこか神秘的でした。母校の小学校で授業をする、というテレビ番組の出演依頼が来たとき、この博物館のことを真っ先に思い出したのです。

「〈天狗の爪石〉はまだお持ちですか? 撮影したいんですが」
撮影の途中、テレビスタッフの人にそういわれて思い出しました。展示室のケースの上に置きっぱなしにしていたのです。
「ちょっと、取ってきます。待っていて下さい」
僕はそういい残して、急いで展示室に戻りました。みんなに石の話をするために博物館から借りた貴重なものですから、なくしては大変です。
「おや?」
僕は首を傾げました。展示室はがらんとしていて、人の影がありません。さっきまでいたはずの5年3組のみんなが、どこにもいないのです。
慌てて〈天狗の爪石〉を置き忘れたケースヘと駆け寄りました。石は消えていて、代わりに名札が落ちていました。テレビ撮影のためにみんなにつけてもらっていた名札です。そこには、アーサー千尋くんの名前が書かれてありました。
僕はぞっとしました。これではまるで神隠しです。天狗の爪石から大きな天狗が飛び出して、みんなを連れ攫っていってしまうシーンが一瞬頭を過ぎりました。いっぺんに37人が消えてしまうはずはありません。僕は展示ケースの間を縫って回り、何か他に手がかりがないか探しました。
「あっ」

続きは本書でお読みください。

瀬名秀明さんのホームページ

奇石博物館のホームページ

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