総合出版・編集プロダクション「ホントに歩く」東海道・中山道

課外授業ようこそ先輩
見城徹

別冊 課外授業ようこそ先輩
見城徹
編集者 魂の戦士

NHK「課外授業ようこそ先輩」制作グループ+ KTC中央出版 編
仕様:四六判 上製本208頁
定価:本体1,400円+税
発行:KTC中央出版
装幀:後藤葉子(QUESTO)
2001年12月27日発行

番組名「感動を編集しよう」
2001年2月18日 NHK総合テレビ放送
授業の場 静岡県清水市立有度第一小学校

心が激しく震えるもの。それをみんなに、伝えたい。
人はなぜ切ないのか?
人はなぜ表現するのか?
生きるって、どういうことなのか?

見城徹(けんじょう・とおる)
1950年静岡県生まれ。
慶応義塾大学を卒業後、廣済堂出版に入社。1975年、角川書店に入社。『野性時代』副編集長を経て、『月刊カドカワ』編集長。数々のベストセラーを手がけ、名編集者として名を馳せる。1993年、角川書店を退社。幻冬舎を設立し、代表取締役社長に就任。2003年にはジャスダックに上場を果たす。

目次

一冊の本ができるためには

授業1 編集って何だ?
出版社と編集者

授業2 最初の原稿
最初の原稿へのコメント
初めての編集会議

授業3 「本気でものを言う」さらなる編集会議
さらに真剣にものを言う
二日目の編集会議

授業4 編集作品の発表
作品発表と感想
授業が終わって

子どもたちからの質問

見城徹ロングインタビュー
本書からの抜粋

子どもたちが編集した冊子のあとがきに見城さんが寄せた編集後記です。

<編集後記>

心が運動すると、風が起こる。
熱が出る。光が発生する。
人はそれに引き寄せられる。
それが君の魅力だ。
君の存在感だ。
運動しない心は何も生み出さない。
運動する心と心がぶつかり合った時、傷口が拡がる。
返り血を浴びる。涙も出てくる。
でも、そこからが本当の関係なんだ。
そこからがすべての始まりなんだ。
君たちの心は運動したか?
運動したら、わかるはずだ。
やればできる。
編集とは感動だ。
見城徹


本書の1日目1時間目の一部を紹介します。

●編集の仕事は、人と人が関係すること

見城 みんなは、編集の仕事ってどういう仕事か、なんとなく想像つきますか? 男子 つきます。原稿とか書いたりする。 見城 原稿を編集者が自分で書くんじゃないんだよね。作家や学者、ミュージシャンや、それから芸能人というか俳優やタレントなどがいるでしょ。そういう人たちに原稿を書いてもらう。それを本にする。
でも、いきなり「書いてください」と頼んでも、すぐ書いてくれるわけじゃないですよ。書いてほしい人たちと、ときどき、ご飯をいっしょに食べたり、遊んだり、真剣に議論をしたり、いろんなことをして、その人がいったい何を書いたらいちばんいいものができるのかということを、常にうかがっています。
人間はだれでも、劣等感とか苦しかったこととか、いろんなものを持っています。君たちだっていっぱいあるでしょ。いやなこととか人に知られたくないこととか、苦しんだり悩んだり、それから密かにだれかを恋していたり。そんなことはまだないか。
ほかの人にはあんまり見せていないものを、人はいっぱい抱えているわけだ。それをなんとかして出してもらおう。そのためにその人に迫っていくのです。
例えば、さっき郷ひろみさんの『ダディ』という本を見せました。彼は、離婚するということに対して、すごく苦しんでいました。ぼくは郷ひろみさんと10年以上のつきあいがありました。よく会っていたの。その間、郷ひろみさんと仕事をして何を本にしようかと、ずっと考えていたのだけれど、なかなか「これだ」というものが見つからなかったのね。そのうち、彼は離婚をしなければいけなくなってきて、そこで苦しんでいる郷ひろみさんを見ていて、「それを書きましょう、それを書いてください」って言いました。
そのことを切り出すタイミングとか、どんな言葉で言うかとか、それはとっても微妙なものでしょ。やっぱり人に知られたくないことだし、本人が血を流すように苦しんでいることだから。
でも、そのことを書かないと、いい作品というのはできないんですね。だからぼくらは相手に対して接近しながら、何をどういうテーマでどうやって書いてもらおうかというのを、いつも考えながらつきあっているんですよ。その人たちをいっぱい刺激する言葉を投げていって、相手の反応を見ながら、うまく書いてもらうように仕向けていっているのです。それは、けっこうきつい作業なんですよ。
そういうことをして初めて、相手が書こうという気持ちになるわけだよね。それで書き始めてもらえたら、今度は、原稿がどんどんできてくる。それを「ここは、もう少しこのシーンを増やしたほうがいいんじゃないか」「こういう性格の人はこういうセリフは言わないでしょう」「この描写 はちょっと余分だから取りましょう」「ここはもう少し色とか匂いとかを入れたほうが世界が広がるから、何か色か匂いを入れましょうよ」とか、いろんなことを言うんですよ。「この主人公の性格がよく見えないから、この主人公が何に驚いたのか、それをもう少し詳しく書いてみてください」とか。
それからやっぱり、褒めることもします。嘘で褒めてもしょうがないけれども、「ここはとってもよく書けています」とか、「ここはぼくも読んでいて感動しました」とか、いろんなことを言わなきゃだめなんだよね。
そうやって作者との関係が深まっていくわけです。単に「ここはだめだ」とか、「ここはいい」とか言うのではなしに、ちゃんと理由があって説得力のある言葉で言わなくちゃいけないんです。  そうやって一つの作品ができていって、それが世に出たときには、関係がもっと深まる。書いた人も書く前とは違う自分になっていく。それから編集者であるぼくもまた、違う自分になる。人間というのは成長していくものだからね。成長しない人間がいちばんつまらないと思う。作品というものを通 して、文章というものを通して、お互いに成長する。そういう関係の結果 として、作品になる、1冊の本ができるということなんです。
編集するということは、人と人とが関係する、人と人とが接近するということだ。そのことによって仲が一瞬悪くなったり、それから、その人の出したくないものを出してもらうわけだから、その人の返り血を浴びたり、返り血ってわかるかな? 書くということは、その人の劣等感や願望や取り繕っているものや薄っぺらなものやぶ厚いもの、そういうものが全部出てしまうものだから、人にものを言うということは、自分もさらけ出して何かを言うことです。例えば嫉妬心がない人が、「君は嫉妬心が強いよ」とは言えないわけです。人にものを言うということは、常に自分が照らし出されることじゃないですか。嫉妬心のない人に他人の嫉妬心を指摘することはできないわけだ。  自分をさらけ出したときに初めて、人と人は関係しあえるんだと思うんですよ。ぼくらの仕事は、その一点にかかっているんですよ。「ああ、こいつの言うことは確かに正しい」とか、「ハッとさせられる」ということがあって初めて、もっと深い関係になっていくんだと思うのね。それがなくて、ただワーワー言って遊んでいたりしても、それは何も成長につながらない。

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