総合出版・編集プロダクション「ホントに歩く」東海道・中山道

別冊課外授業ようこそ先輩
矢口高雄
ふるさとって何ですか

NHK「課外授業ようこそ先輩」制作グループ+ KTC中央出版 編
仕様:四六判 上製本210頁(口絵カラー2頁)
定価:本体1,400円+税
発行:KTC中央出版
装丁:桂川潤
2002年9月22日発行

番組名「ふるさとって何ですか」
2002年6月 NHK総合テレビ放送
授業の場=秋田県平鹿郡増田町立増田東小学校

あなたに「ふるさと」はありますか?
マンガ『釣りキチ三平』の作者のふるさとがここにある。
春には閉校になる母校の小学六年生7人と、秋田の豪雪村を舞台に、一冬かけてつくられた「ふるさと物語」

あれほど恨み呪っていた雪というものが、ものすごく美しいものに見えてきた。ふるさとの山や川を想うと、心が洗われるような、真っ当な考えを持てるような自分になるということですね。
ちょっと名のある仕事をしたからといってチヤホヤされたり、傲慢になったり、ちょっと背伸びをしたり、かっこつけたりというような、さまざまな要素が人間には生まれてくるんですけど、そういうことをきちっとわたしの胸に正してくれる存在として、ふるさとがある。ぼくには、ふるさとの思い出、ふるさとの山や川というのはそういう存在なんです。 (本書 矢口高雄インタビューより)

矢口高雄(やぐち・たかお)

漫画家・矢口高雄さんは、1939年に秋田県平鹿郡増田町に生まれる。町の中心から20キロも離れた奥羽山脈のふもとの村で、冬季には3メートルの積雪がある豪雪地帯である。この地でマンガ少年、釣りキチ少年、昆虫少年として「忙しいガキ」時代を送る。
少年時代のマンガ熱が醒めやらず、高校卒業後12年務めた秋田の銀行を辞め、30歳のときに上京。漫画家として異例のスタートを切る。

1973年「週刊少年マガジン」に『釣りキチ三平』の連載を開始。同年発表した『幻の怪蛇・バチヘビ』 は、全国に一大ツチノコブームを巻き起こした。
翌1974年、この2作品で第五回講談社出版文化賞(児童マンガ部門)受賞。1976年、自然とクマと人間の闘いを描いた『マタギ』で第5回日本漫画家協会賞グランプリを受賞。このようにして、少年のころからのマンガ家になる夢を見事に成就した。

自分のふるさとでの少年時代がもとになっているマンガを描き続けている矢口さんだが、東京に出てきた当初は、自分の生まれたふるさとに対してあまり自信を持てなかったという。どちらかというと、自分のふるさとが大嫌いだった。嫌いだったいちばんの理由は、冬に雪が降ることだった。雪は、雪かきなど都会にはない労働や貧しさの根源のように考えていた。ところがふるさとを離れてその認識が変わった。

「東京に行って、マンガ家になって初めて正月を迎えたときに、何とも心の落ち着かない、心の休まらないような自分を発見したんです。外を見れば、バスやトラックや自動車が砂埃を上げて走ってる。そういうところで、雪のない正月。「ざまーみやがれ」と言うぼくがいたんだけど、テレビでふるさとの雪便りみたいなのをやってると、いつの間にか涙ぐんでいるような自分がいるんですよね。そういうときに、「あっ、やっぱりぼくは雪の中から生まれてきた人間なんだな」ということを初めて思ったんです。
そうすると、あれほど恨み呪っていた雪というものが、ものすごく美しいものに見えてきたんです。望郷の念とかそんなものではなくて、そこには、たくましい先祖の生活の知恵まで浮かび上がってくるんです。ぼくがふるさとを自分のライフワークのようなテーマにしようと思ったきっかけはそこにあるんです。 」(本書インタビューより)

ふるさとを描き続ける漫画家矢口高雄さんが、まだ生まれ故郷を離れたことのないふるさとの母校の後輩たちに「ふるさとを考えてみよう」という課題をカルタづくりに託して出した。舞台となる村の小学校は、翌年春には廃校になることが決まっている。授業は、秋から春までの半年間に繰り広げられた。閉校式には美しい45枚のカルタが仕上がった(本書にカラーで収載)ふるさとは見つかったのだろうか。

本書の目次

口絵・矢口高雄さんのふるさとの原画(カラー)
1 物語の始まり ふるさとに戻って

2 ふるさとの母校の後輩たちと会う
3 矢口さんの原画を見る
4 自分たちの土地について考える
5 道草をしたことがありますか
6 授業「道草」
7 「秋」を感じるものを写実的に描く
8 カルタづくりの相談
9 自分の土地の再発見
10 矢口さんのアトリエに手紙が届く

11 冬の間のカルタづくり
12 矢口さんの返書に応えて
13 東京への旅
14 ふるさとと東京 そして今昔
15 再び「おらが村」でのカルタづくり
16 矢口さん 自著のマンガを語る

17 春の訪れ
18 最後の授業
19 閉校式
20 授業を終えたあとに ふるさとは自分を正してくれるところ

(本書中に子どもたちがつくったカルタを8頁にわたり収載)

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