ウォークマップ「ホントに歩く」シリーズは、せっかくの1万分の1地形図を使用しているのだから、「地図を読んで街道を歩く」楽しさも味わえたら、なおいっそうお得だと思います。ただし、こんなふうに歩かなければならないなどということはまったくなく、このマップならではのこんな楽しみ方もできるという、あくまでも一例にすぎません。ウォークマップ「ホントに歩く東海道」の遊び方について記します。
地形図の特長
例を「保土ヶ谷~戸塚」区間で見てみます。

まず、市街地図(市販の1万分の1地図)と地形図(国土地理院発行や行政白地図)との簡単な違いを知っておきます。
地形図は、地形を表現しています。等高線が描かれ、地図記号があって、土地の状況、水田、畑、針葉樹、広葉樹、果樹園・・・などなど、また、建造物の種類や大きさも正確にわかります。地形図が市販市街地図と違って不便なのは、生活用途の地図ではないので、交差点名やバス停などの記載はありません。それで「ウォークマップホントに歩く」シリーズでは、歩くための便宜を考えて、地形図上にそれらを追加情報として描き入れています。
また、歩くためだけの「コース概念図」とも違って、地図上の距離が、1cmが実際の100m相当であることが正確です。しかし、山岳地帯でよくあるように傾斜による実際距離との違いはあります。
地図向きと道の行く方向
保土ヶ谷駅を下りて、マップを見ると、駅の下に「東口」とあり、「あれっ?」と思う方がおられるかもしれません。地図は普通は上が北で、「そうでない地図は使わない」という正統派の人もいらっしゃるでしょう。お詫びして、ご理解をお願いしたいと思っています。
ウォークマップ『ホントに歩く東海道』では、いろいろ欲張って、地形図と同時に見やすいコース図も兼ねなければという目的のために、あえてこの原則を外しています。その難点については、申し訳ありません。
地図向きを「ヘッドアップ」方式にしたことによって、東海道を右から左へ順を追って見ていけるように、コースを地図の中央に配置するように地図を傾けています。どれほど傾いているかは方位マークを見ればわかるのですが、国土地理院図には経緯度線も描かれているので、経線ならそれを垂直、緯度なら水平にすると、東西南北がわかります。
保土ヶ谷駅のところに経度・緯度の線をなぞってみました。なるほど、駅の下は南口ではなく東口になる理由が腑に落ちますが、正確には、東南かな。

沢筋を色塗る
第2集No.5のMapAの東海道は、「北東から南西」へ向かっています。それがマップBで「東から西」に方向転換します。東海道はなぜ直進しないのでしょうか。これについては、後述します。さて、No.5の蛇腹マップを右から左へザッと広げてみます。この区間で試みて面白い作業は、川の流れを水色の蛍光ペンでなぞってみることです。
(右)東から帷子川、今井川、川上川、平戸永谷川、阿久和川。No.6の柏尾川。それで、旧東海道は、今引いた青色の線、川(沢)沿いに走っているのか、川を横断しているのかを見ます。これは、地形図読みで重要なことです。本当は、5万分の1、2万5千分の1地形図の広域地図で、海へ向かって伸びる尾根筋の幾本かを確認するといいのですが。帷子川は、その一つの大きな沢筋で、東海道はその扇状地から、今井川の狭い沢筋を選んで入っていきます。道の気持ちがわかりますよね。

東海道が直進しない理由
保土ヶ谷駅を出て、JR線を越えると、道はT字路に突き当たり、刈部本陣跡があって、そこを右折します。ここからが宿の中心地です。道が直進しないのは、今井川の沢沿いに南西方向にやってきましたが、ちょうど今井川がここで西に方向転換するのに応じて、東海道も西転します。
まっすぐに行こうとすると、今井川を徒渉して、その先の山の中へ入って行かねばなりません。もちろん道は、できるだけ歩きやすい平坦なコースを選ぶので、この変換にはうなづけます。右折して、行く手両側はすぐに傾斜地で、その北側の裾野をJRが走っています。大仙寺に立ち寄ってJR線を越えてみてください。すぐに標高が上がっていきます。ここを古東海道が走っていました。

今井川の水量がどれくらいであったか、もし今井川の沢筋が氾濫などで歩きにくかったのなら、斜面の水平道の古東海道は理解できます。

尾根の稜線歩き
保土ヶ谷から歩く東海道は、今井川の東西に延びる沢筋に沿っていて、そこに保土ヶ谷宿が形成されています。川の地番(住所)で言えば、保土ヶ谷宿は、帷子川を東端とする今井川の流域に属する地番(住所)です。次の戸塚宿は、河岸を替える、つまり柏尾川に属する地番に替えるわけです。それで、その地番変更(今井川の川域から川上川の川域へ )が、権太坂越えであるのです。当然、道は沢筋ではなく、少し複雑な地形ながら、東海道は尾根にあがって、その稜線を歩きます。

地図を立体的に見やすくするには、等高線で色分けすれば高低がわかりますが、市街地ではあまり劇的ではありません。しかし、MapCの黒丸番号31付近、権太坂小学校と光陵高校、保土ヶ谷養護学校の崖マーク、等高線など、東海道を歩きながら左右の傾斜を確認されると面白いと思います。権太坂2丁目のカーブのところを南に下りていくと、国道1号線までの標高差が40mもあります。階段の地図記号もありますね。面白い。このように、「稜線歩き」を意識すると、楽しいです。



地図の等高線と標高表示
地形図からは、標高も読みとれます。刈部本陣跡からもし東海道が直進すると、その先には、崖記号に続き、20m、25m、30mの混んだ等高線が確認できます。今井川は10m未満です。北は、方位マークの左に・47の標高表示があります。この標高表示を探して見つけて、地図に順々に印をつけておきます。
権太小学校の先に70mの等高線があって、それを越えたところから坂のピークになります。黒丸番号36の先で60mの等高線を横切っているのは、焼餅坂です。番号42の崖を下りて、次の川域、道は川上川に沿い始めます。平戸永谷川・柏尾川になって、保土ヶ谷の次の戸塚、柏尾川の沢筋に入りました。
ところで番号47から分かれる柏尾通り大山道は、マップ5左上端の阿久和川を目指し、それに沿って北上するのです。この道もとても楽しいので、機会を見つけてぜひ歩いてください。
自分用のガイドブックを作る
登山での地図読みは、未知のルートをあたかも既知のごとくに、コースガイドを執筆するように行います。この区間はどんな道で、傾斜はどうか、そこから何が見えるか。どこで道はどのように方向を変えるか。危険個所はあるか。
街道の地図読みでも同じことができるし、また趣の違う面白さがあります。以前、「登山家の街道歩きの楽しみ」と題する短文を書きました。登山家でなくても、平地の地図読み歩きは、ときには冒険のようなエキサイティングがこともあります。
2014年02月10日 (Mon)FC2ブログ 風人社OHの編集手帳からの転載
