前回(2012年12月23日)の続き。 大磯の化粧坂ですが、歩いているときにふと不思議に思いました。権太坂、品濃坂は急坂で坂を意識せずにはおれませんが、化粧坂は、名前に「坂」がついていても傾斜の意識を忘れていました。あるガイドブックには、「化粧坂を下っていくと、松並木」と記されていますが、上っているのか下っているのか。

歩いた行程の高低差グラフは、GPS軌跡からでも、カシミールなどの地図ソフトでも表示できますが、ここではアナログな地図読みです。

まず、国土地理院発行の1万分の1地形図「平塚南部」を見ますと、高麗山の麓、高久神社の境内に標高10mの実線の計曲線があって、それが南西に国道1 号線とほぼ平行に走った後、分岐した旧東海道を直角に横切ります。続いてJR線も横切ってから、再び国道一号線に平行して走り、今度は合流する前の旧東海道を逆方向に横切るのです。

文章に記すと煩雑ですが、つまり、化粧坂に入って計曲線を横切る区間は登りで、それから再び計曲線を横切る区間は下り坂なのです。地図記載の標高を見ると、花水橋を渡ったところが8m、高久神社入り口が6m、分岐した国道1号線が5.01m、化粧坂の中間部は計曲線10m以上で、合流したところが7.22m。これらによると、後半は3mぐらいの下り坂なのです。不思議です。なぜこの程度の勾配で、わざわざ「坂」なのでしょう。
私が不勉強で知らないだけの可能性が高いので、恥を忍んでご存知の方の御教示をお待ちしたいと思います。

明治15年測量図の等高線はわかりやすいのですが、現在地図の地形と少し違っています。けれど、Aの箇所が一番高いので、やはり化粧坂は少し上って少し下ることには変わりありません。

化粧坂 明治15年測量図
化粧坂(明治15年測量図)

ところで、なぜ坂が気になったかというと、水準点9.6mのところで行く手左に路地があって、その道が尾根筋から下る傾斜の坂になっているのをふと見たからです(写真は、おやっと思ったらすぐに撮っておくものです。いずれ再調査します)。
高いところを旧東海道は通り、国道1号線は低いところを通っていることを確認しました。 わざわざ少し高いところを通ったのは、やはり湿地を避けたのでしょうか。

ここから余計な話。上図、明治15年測量図のBで、道は「へ」の字形に曲がりますが、この辺りが広重の高麗山の景観で、ここへ来て、道は正面に高麗山を大きく見て、「あっ」と声を上げてひるんで、左へ避けたみたいに見えるのには、少し笑いました。
それから、前回に書き漏らしましたが、南湖の左富士で、道が北西へ曲がる理由は、下の地図で、柳島通り大山道が、小出川の屈曲通りに曲がっていることと無関係ではないように思います。

弊社刊『キャーッ! 大山街道!!』のp.156に記載されたとおり、東側へ川が湾曲するように押されて、東海道も同じように北西へ進路を変えたように見えませんか。
道が、何を考えたのかを想像することは楽しいものです。

南湖と柳島道
南湖と柳島道(東海道は青線、柳島道が赤線)
カーブする南湖の左富士手前(東側)の東海道
カーブする南湖の左富士手前(東側)の東海道

【該当マップ・書籍】
『ホントに歩く東海道』第2集(保土ヶ谷〜平塚・大磯)
中平龍二郎・風人社編集部著『キャーッ! 大山街道!!』

キャーッ! 大山街道!!