街道ガイド本に掲載された地図の多くは、ルート図です。イラストマップに代表されるルート図は、地形図ではありません。ルート図は線(ルートライン)で、地形図は面であることが、重要な相違点です。ルート図は、ルート上を歩くためのもので、地形図に描き加えたルートは、広がりのある範囲の地形の中の一つの道を特定しているに過ぎません。ルート図には,道は一本ですが、地形図上には、道はいっぱいあります。
地形図は平面で二次元の表現ですが、等高線によって、標高、傾斜、凹凸が読図できます。つまり、三次元空間を読みとれるのです。ルート図では、イラストなどで描かなければできません。
地形図上のルートは、街道を歩くとき、ルート上を外れずに歩くためではなく、目的地に向かって歩いていくための指針です。旧街道を特定し、その通りに歩きたいという目的であっても、いや、そうであればこそ、線のルート図では歩けません。
実際に旅人は、目的地に向かって線路のようなルート上を歩いているのではなく、あっちに寄りこっちに寄り、回り道をしたり、道迷いをしたり、 面上を歩いています。その方が楽しいとも言えます。
ルート図では、「急坂」「登り」とか、時には文字で示してあることもありますが、地形図では文字どおり地形を表現しているので、これから歩く道が登りなのか下りなのか、尾根筋なのか沢筋なのか、丘のように高いところなのか窪地なのかも読みとれます。
地形図では、ルート上だけでなく、脇道の散策や道迷いも楽しめますが、じつは、それが街道歩きのときの自分だけの発見を生む舞台を提供しているのです。
地形図と目の前の地形の照合も面白いものです。2.5万分の1地形図では、1ミリが25mですから、もし、1ミリの粒のようなカーブの等高線があれば、 目の前に25m幅の10mほどの高さの尾根端を見ることになります。地形図は、二次元の平面表現と言いました。そして三次元の空間を読みとると言いました。さらに言えば、四次元の時間も読みとる事が可能なのです。
ウォークマップ「ホントに歩く」は、1万分の1地形図を使っていますので、1cmが100mです。読図の最初は、現在地の地形図上での確認です。地下鉄から地上の道に出る、バスから降りる、その自分の立つ場所は地形図のどこなのかをピンポイントで特定します。そして、×時0分、Aポイントを出発して地形図上の10センチ分、つまり1キロを歩いてB地点に来た時、×時20分になりました。目的地Cが地形図上のAから15センチ先だとすると、ここまで時速3キロで歩いてきたので、あと10分でC地点に到達できることが予想できます。ただし、傾斜などの地形条件が同じだとして。そんなことも読図によって想像して歩くことができます。
また、地形図は面ですから、何本もの交差する道があります。それらの道がどこに通じているのかも範囲内ではわかります。寄り道を誘惑しています。
問題は、現在の市街地では、建造物が密集してるため、わずかな傾斜などの微地形を等高線で読みとるのは困難です。それで、建造物が密集する前の地形図、古いものでは明治時代の迅速測図を対照すると、現代の道のカーブなど道の理由を理解できるのです。


ウォークマップ「ホントに歩く」の編集コンセプトは、この街道歩きの楽しみを提供したいことにあります。読図の面白さをぜひ堪能してください。
追記
「道の理由」の例は、いたるところにいっぱいありますが、例えば、
kazesayage誌平地編1号の記事→こちら(リンク未)
かわら版4号→こちら(リンク未)
の記事を参照してください。
なお、kazesayage誌は、分売購入が可能です。→こちら(リンク未)
2013年11月13日 (Wed) FC2ブログ 風人社OHの編集手帳からの転載