気象の理論については小学校高学年、実践の観天望気では、幼稚園を卒業してやっと小学一年生になったばかりの程度が私の今の実力でしょうか。両方とも、せめて中学校卒業程度までにはいきたいものです。
とりわけ観天望気の力をつけたいと念じています。これを学ぶには、経験を重ねる時間が必須です。山岳気象に関しては、もっと頻繁に山へ行かねばなりません が、平地に関しては、とにかく毎朝出勤時に空を見上げて、クラウドウォッチングをしています。
まだまったく気象の勉強もせず、興味もなかった山登りの新人の頃でした。 濃い霧の中にいるような雨でした。ポツポツというような雨粒ではありません。前夜の夜半、山小屋ではしとしとと雨が降っていたようでしたが、朝の出発時には怪しげな雲模様ながら、雨具はだれも着用しませんでした。
その日の天気予報はよくなかったので、リーダーの考えは、雨が降り出す前に早い時間に下山してしまおうというものでした。
ぐんぐんと下山中、そろそろ雨具を着た方がいいほどに衣服が濡れましたが、リーダーは雨具の着衣の時間を惜しんで、休憩も取らずに下山を急ぎました。メンバーが「レインを」と言っても、「もうちょっと」とそのまま歩き続けたのですが、ついにぱらぱらっと、今度ははっきりと大粒の雨となり、もう誰もが黙ってザックを下ろして雨具を着始めました。狭いトラバースの登山道で片側は急斜面。装着場所としては最悪です。ザックの中まで雨が入るくらい雨は激しくなっていました。
それからさらにザーザーぶりとなり、おまけに風が強まるなか、黙々と下山し続けて、かなり里近くまで下りてきました。屋根のある東屋があって、そこで休憩になりました。そのときは遠雷からだんだんと近くに雷鳴が聞こえるようになり、雨降りの激しさは衰えません。すぐにこの雨中に歩き出そうと提案する人はいません。
しかし、やがて20分ほど過ぎると、雨は上がりました。それで、無事に下山したのですが、雨具の下の衣服は濡れたままでした。
これは、それほど高度でない気象の知識と観天望気ができれば、違った行動になっていただろうな、と、今になって思い出します。小屋泊の夜中に温暖前線が通過し、下山途中で寒冷前線が通過したのですね。つまり、二つの前線のスカートの下を私たちは下山していました。
出発時に雨具を着け、稜線では雲と風向と気温に留意し、寒冷前線の通過時に安全な場所で雨宿りをすべきでした。そして、十分に高度が下がって平地近くになったら、雨具はザックにしまい込んで、もし下の衣服が濡れていたら、そこで着替えてしまうことでした。
これは場所や時期が違えば、気象遭難になるかもしれない事例とも思え、もし自分が山行リーダーだったら、適切な指示が出せるだろうか、不安です。気象知識と観天望気の力が必要です。

東海道マップの現地調査で、写真のような雲を撮影しました。西から雲底の黒い雨雲がどんどん近づいてきて、ついにポツポツと。これがそのときの写真です。右の黒い雲の下では、雨が降り始めています。それで、私は傘をザックの上部に移しながらも、近くのスーパーに入って、飲み物の調達やトイレ休憩を済ませ、20分後くらいに外に出てみました。するとちょうどこの写真の左右を逆転したように、右側の空が青空になり、黒い雲底の乱層雲は東に去って、少し激しい通り雨が過ぎ去っていきました。
やったね。結局、傘は開かずにすみました。こういう体験を重ねたいな。いくつか、この種の自慢話のネタが増えてきました。しかしもしこれが、逆に判断の失敗であっても、そこから学べる体験が出来れば、楽しいなと思います。
みなさんの体験にも学びたい。もしあれあば、ぜひ教えてください。
2013年02月10日 (Sun)FC2ブログ 風人社OHの編集手帳からの転載
