今日、東京医科大学から「東寿」という会誌が恵送されてきました。 医学生の解剖実習のためにご遺体を献体する遺族会の会誌です。
どうしてそんな会誌が弊社に送られてくるのか。
1995年に、日本で古い学会の一つ、日本解剖学会が創立100周年記念事業として、上野の国立博物館で「人体の世界展」を開催しました。驚くべきことに、会期中に訪れた入場者は46万人にのぼりました。
そのとき、解剖学会会員によるミニ講演会が行われましたが、その内容を書籍にして残そうという記念事業企画があって、その出版のご相談が弊社にありました。そして、納期限が年度末に決められたこの本にも、短期集中作業で精魂傾けて取り組んだことを思い出します。
80人を超える解剖学者が1テーマずつ3ページを担当した講義録を、原稿催促・校正の往復など、煩瑣も極めました。そして無事に、1996年4月1日付で『解剖学者が語る人体の世界』を新刊発行いたしました。
発行と同時に初刷りは売り切れ、2刷を同月に、5月13日に3刷、11月に4刷まで版を重ねることができました。「東京新聞」科学欄の読者プレゼント提供の依頼を受けるなど、いろいろなところで話題になりました。
本書の巻頭論文のために、東京医科歯科大学の講義教室で、私一人が生徒になって医学部長だった佐藤達雄教授の解剖学講義を受けるという、非常に幸運光栄な体験もさせていただいたものでした。
弊社出版本の本棚から今取り出して見ていると、「迫力あるなあ」と、自慢したい気持ちが湧きます。これからも頑張らねばと、自分に言い聞かせます。ものづくりには、迫力、エネルギーが不可欠なのですね。
なぜ献体の会の会誌が送られてきたかですが、100周年記念のときの解剖学会理事長だった内野滋雄東京医科大学教授(現名誉教授)が、この東寿会の理事長で、その会誌に本書から1編ずつを毎号転載されているからです。

17年経っても、本書から学ぶものはまだたくさんありそうです。前述の佐藤教授の肉眼解剖学「人体の層」の巻頭論文には、「ものの見方」に関してとても示唆深いものがあります。その内容をきちんと紹介できればいいのですけれど、ご関心あるかたは、図書館で検索してみてください。もちろんご購入いただければ、それ以上の喜びはありません。
発行本のことを書くと、宣伝と、弊社の歴史の思い出アワーになってしまいます。お許しください。
2012年12月26日 (Wed)FC2ブログ 風人社OHの編集手帳からの転載

