総合出版・編集プロダクション 「ホントに歩く東海道」

藤田恒夫著 鍋のなかの解剖学(風人社)

鍋のなかの解剖学

藤田恒夫著

鍋のなかの解剖学

発行:風人社
仕様:四六判 上製本240頁
定価:本体1,900円+税
1995年3月20日発行
装幀:高麗隆彦
ISBN9784-938643-12-6 C0040 P1900E

★日本図書館協会選定図書

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解剖学者 藤田教授の研究室には、立派な台所がある。 アンコウ鍋で形態観察、ミトコンドリア・スープへの挑戦、 膵臓の舌触りへのこだわり、……。 その研究室で、消化管ホルモンの独創的研究を生みだし、 分野の垣根を超えた幅広い好奇心で、縦横に行動する教授の、 学問の愉しさあふれる本。

著者紹介

藤田恒夫(ふじた・つねお)

1929年生まれ。 東京大学医学部卒業。同大学院博士課程(解剖学)修了。医学博士。 新潟大学医学部教授。 生命科学の総合誌「ミクロスコピア」を主宰するほか、英文の国際学術誌を編集・発行するなど、専門の研究(神経とホルモンの連続性など)にとどまらない多彩 な文化活動を展開している。 アメリカ解剖学会名誉会員、国際形態科学常任理事、日本ペンクラブ会員、日本味の会副会長。 主な著書に『腸は考える』『入門人体解剖学』訳書『美しき完成~ノーベル賞女性科学者の回想』など。

本書の目次

1 台所のある研究室
鍋のなかの解剖学
ミトコン・スープ
膵臓を食う/ 料理と染色
「腸能力」を追って
腸に奉仕する脳
かえるが、いま面白い(1)
かえる、いま面白い(2)
肝臓を食う会/ 朝食会二十年

2 独創性への畏敬
小宇宙へのロケット
ミクロの折り鶴
ジェンナー礼賛
ハンター博物館
骨に刻んだ時刻
北里先生との記念写真
消えたオギノ邸
うまみの研究

3 科学の世界と日本語
英語は永劫か
国際化の流れと日本語
医学の業界用語
中国留学生について
中国の日本語医学クラス
国際学会あれこれ

4 らせんと巡りあい
パラサイト
夏雲の流れる下で
小川鼎三先生の思い出
脳耳
バルクマン先生
研究のらせん
先生とのわかれ
父と時計

5 旅と絵と
私の医学生時代
一枚の絵
たのしい理科クラブ
破壊する勇気
芸術のゲップ
ベルゲンで
ラーンのほとり
病床からの手紙

あとがき


取り上げていただいた書評をご紹介しています。

「日本経済新聞」 1995年4月9日発行 「あとがきのあと」

「日本経済新聞」1995年4月9日発行「あとがきのあと」

「毎日ライフ」1995年11月号 137頁「BOOKS」

動物と名の付くものは、毛だけを残して脳から足・尾まで食べてしまう民族は多い。だが、大学の研究室に台所や食器棚を完備して教室員や学生とアンコウ鍋を囲んだり、ミトコンドリアや核のスープの試食会に情熱を燃やす医学部教授は、いないのではないか。
著者は神経とホルモンの研究で国際的に有名な、新潟大学医学部第3解剖学教室教授。生命科学の総合誌『ミクロスコピア』を主宰するほか、英文の国際学術誌の編集発行者でもある。20年余り日替わりで朝7時から独・仏・英の原書輪読会を開いてきた。もちろん朝食付きで。バター塗りやコーヒーは著者の直伝。昼食も交代で自分たちで作り、みんなで食べる。筆者も10年ほど前、ソースと醤油をまちがえたのを理由にクビになるまでは担当していた。「料理のうまい奴はいい標本を作る。染色のうまい奴はうまい料理を作る」が書名の由来。
日本味の会副会長らしく食味が随所に登場するが、顕微解剖学者として研究、先輩・同僚・弟子・学生、留学、絵と旅、学会の話を借りてユニークな研究者生活を紹介する。内容も文章も実にさわやかだ。

「メディカル朝日」1995年8月号 117頁「ほん」

取材していて、解剖学者の物の見方は面白い、というより、「へえ~」と思わされることが多く、人柄にも大いに興味をそそられる方に出会った経験が多々ある。それは、ミクロの形像からその本質を引き出し、マクロの機構を組み立てるという、私なりに理解している解剖学者の思考の形によるものかもしれない。一読して著者も、そのような方だと確信。ぜひお目にかかりたいと思った。鍋のなかの解剖されたアンコウにも研究者としての目が光る。

「科学朝日」 1995年7月号 92頁 「books新刊ガイド」

「科学朝日」1995年7月号92頁「books新刊ガイド」

「京都新聞」(夕刊)1995年7月5日 5頁「サイエンスガイド」

腸ホルモン研究で独創的な成果を挙げた解剖学者の藤田恒夫新潟大名誉教授の好エッセー集。台所があるという藤田研究室での昼食や朝食会の話から、ミトコンドリアのスープ、すい臓料理など読んでいて愉快になる。
著者は十数年、生命科学の総合誌「ミクロスコピア」の主催者として活躍しているが、その盛んな好奇心がよく表れている。
二十七年間、教授を務め、今春定年退官した新潟大医学部への愛着を込めながら、恩師や同僚、教え子らとの交流も書き込まれており、基礎医学者の生活と意気込みが分かる。

「西日本新聞」1995年6月19日 19頁「読書 本と人」

好奇心が科学の原動力
「愛するものを食べてみたい」という危ない願望を、解剖学者の藤田先生は抱いた。愛の対象は研究対象だった膵臓(すいぞう)。膵臓料理はラルースの大料理辞典にも載っていない。知人のシェフが研究すること半年余、五品のコースが完成した。「核酸の味が基調になっているのかもしれない、赤ワインがもつような渋みを含んだ、まろやかなうまみ」を賞味しつつ、脳裏には「愛する膵臓との長いつきあいの情景が走馬灯のようにめぐっていた」ー。
「この道一筋じゃないとダメという日本の古典的な見方からは、研究は浮気ざんまい、趣味の道におぼれる、学生と付き合うのが好きなんていう私は減点学者じゃないですか」
岡山大学時代に膵臓を研究、新潟大学では腸、今春から移った日本歯科大では味覚を研究している。学生時代から絵画に親しみ、制作旅行は今も続く。勉強会からの趣味の会まで、学生に限らず人付き合いに篤い。「酒の上の約束は必ず守る、作った会は滅ぼさない、できた仲間は捨てない」をモットーにし、守ってきた。
この本には、その幅広い活動分野で出会い、あるいは引き起こした出来事や、さまざまな人々に関するエッセーが知的に、ユーモラスにつづられている。歴史上の人物から同僚までの多彩な科学者に向ける目も、業績もさることながらそれぞれの研究への情熱のありようへの好意と賛嘆、共鳴をるる語る。
「減点学者」を自称しながら藤田さんは、腸がさまざまな化学物質を識別するメカニズムを世界に先駆けて解明、版を重ねている大作「標準組織学」の著者であり、英文学術誌の編集も続けている。
「向学心より好奇心がもっと重要だと思うんですよ。それが科学や文化の原動力じゃないでしょうか」。この本にはその精神のエッセンスが詰まっている。

「新潟県医師会報」1995年6月 NO.543「新書紹介」笹川力氏

今年3月、新潟大学医学部第三解剖学教室藤田恒夫教授の定年退官記念祝賀会で、同月出版の新書「鍋のなかの解剖学」(藤田恒夫著)をいただいた。本書は顕微解剖学者藤田教授の学問、教育、趣味についてのユニークで、ユーモラスで、知的なエッセイ集である。第1章「台所のある研究室」、第2章「独創性への畏敬」、第3章「科学の世界と日本語」、第4章「らせんと巡りあい」、第5章「旅と絵」にわかれ、41篇からなっている。
著者の藤田教授は、1929年東京に生まれ、厳夫恒太郎先生は東京大学医学部解剖学教授。54年東京大学医学部卒業。59年同大学院博士課程(解剖学)を修了し、膵臓の神経の研究により医学博士、同大学助手。61年岡山大学医学部助教授、2年間西独キール大学に留学。68年新潟大学医学部教授(顕微解剖学ー組織学)。「標準組織学、総論・各論」(藤田尚男・藤田恒夫著)は世界的名著。主要研究領域は神経とホルモンの連続性。英文の国際学術誌「Archives of Histology and Cytology」を編集・発行。アメリカ解剖学会名誉会員。国際形態科学会常任理事。生命科学の総合季刊誌「ミクロスコピア」を主宰。日本ペンクラブ会員、学生時代から絵画に親しみ、89年個展、日本味の会副会長など多彩な文化活動を展開。
藤田教授の研究室には立派な台所があり、安くてうまい昼食作りの当番が教授ともども20余年も続いており、同じ釜の飯を食っている。「料理の上手い奴はいい標本を作る、染色の上手な奴はうまい料理を作る」と、美しい標本を学生実習に見せるよい教育、よい研究のためなのだ。解剖実習の合間には、冬はアンコー鍋、春は牛の心臓、夏はウシガエルのもも肉を楽しみ、6月には実習後、全員の学生と海辺で豚の肝小葉を眺めながら肝臓を食べる。教授の長年の恋人「膵臓」の料理(牛)を私もERCP(内視鏡的逆行性胆道膵管造影法)研究会のメンバーといっしょに大学近くのフランス料理店でご馳走になった。グルメ通の顕微解剖学者の決定版は、器官の食べ分けから細胞内小器官の食べ分けで、豚の脳から分画して取り出したミトコンドリアと核の美味なるスープである。週3回、早朝7時からのコーヒーとパンの朝食会では、学生と外国語(独、仏、英)の輪読を20余年続けている。単位にならない朝食会にでる学生もつらいし、教授にとっても無償のサービスで、「やせがまん」の五文字がこの朝食会のモットー。しかし、朝食会の根性組の学生が、みな個性豊かな医師や学者になって、多彩な活躍をしていることに、学生を愛する教授は満足している。
藤田教授の画期的な研究は、脳や外来神経の指示を受けない腸の中の味細胞による独自の超能力についてで、新潟に着任早々、私も協力して始まった。消化管ホルモンが粘膜から湧き出てくる「組織ホルモン」との定説を覆して、?腸上皮の内分泌細胞(基底果粒細胞)が数型に分類でき、一つのホルモンに一つの細胞型が対応している、?これらの内分泌細胞が細長い突起をのばして腸の内腔に頭を出し、その先端に孔雀の冠のような微繊毛をつけ、これがセンサー細胞(味細胞)である、?腸の内腔に適当な化学刺激(酸や栄養素)を与えると、特定の内分泌細胞が下端部から分泌果粒(脳腸ホルモン)を開口放出し、血中に入ったり、局所に作用することを発見した。
このエッセイ集には、藤田教授が大切にしてこられた「学問する心意気」、「学問に遊ぶゆとり」が読みとれる。(新潟市)

「本の雑誌」1995年5月号64頁「地方小出版よろず案内」

「本の雑誌」1995年5月号64頁「地方小出版よろず案内」

「朝日新聞」1995年4月30日(日)

著者の解剖学教室には、立派な台所があるという。実習に使うのが目的か、その後、調理するのが目的か。春は牛の心臓、夏はウシガエル、冬はアンコウを楽しむ。手に入ったとなれば、細胞核やミトコンドリアまでスープにしてしまう。もちろん学問上の話題が付け合わせとなる。ほかに、物忘れのひどい恩師や、家に居ついてしまった学生の思い出など、愉快で知的なエッセー集。

「共同通信」配信記事 1995年4月8日 新潟日報 中国新聞 岐阜新聞 山形新聞 高知新聞

顕微鏡を使ったミクロの世界の解剖学が専門で、地方から全国向け科学雑誌「ミクロスコピア」を発行している藤田恒夫新潟大教授(65)の研究室の名物は特設の台所。
アンコウなべを看板料理に共感、学生がメスならぬ包丁さばきを見せるときもある。
このほど、顕微鏡での観察だけでは物足りず、遠心分離器を利用してスープを作ってみた。
「牛や豚の細胞の中身をバラバラにしたスープの味は、ちょうど魚の白子みたいな味でしたよ」
今春の退官を機会に、そんな名物教授の日常を「鍋(なべ)のなかの解剖学」(風人社)というユーモアたっぷりの本にまとめた。
「研究に必要なのは好奇心。けしからんとは言わないで」と屈託なく笑った。

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