総合出版・編集プロダクション 「ホントに歩く東海道」

松本健一著 原理主義 ファンダメンタリズム(風人社)

原理主義 ファンダメンタリズム

松本健一著

原理主義 ファンダメンタリズム 表紙画像

 

発行:風人社
仕様:四六判/上製本/258頁
定価:本体2,200円+税
1992年9月1日発行
装幀:高麗隆彦

ISBN9784-938643-06-5 C0020

注文する


原理主義とは、イスラム固有のものではなく、 どの民族にも生じうる普遍的な心性の思想化の概念である。
本書は、原理主義を近現代史の 一つの新しい思想軸に据えた最初の本として、 日本近代史も捉え直す。 世界各地に高まる原理主義の風潮の中で、 今後の世界の動きの見方を一新する。 (『挟撃される現代史』増補新版 )

著者紹介

松本健一(まつもと・けんいち)

作家・評論家 1946年群馬県生まれ。東京大学経済学部卒。近代日本の民衆の心性(エトス)に着目した視点で、思想史を捉え直す。その刺激的な著作群は、<現地を歩く>実証精神に裏付けられている。数多くの紀行文 もある。

本書の目次

原郷(パトリ)の引力 普遍の心性(原理主義の現在)~二十世紀の終わりに

プロローグ 原理主義という思想軸

一 現代を挟撃する原理主義
二 原理主義の成立
三 ナショナリズムと原理主義(上)
四 ナショナリズムと原理主義(下)
五 カリスマの指し示す「原理」
六 二つの「革命」
七 「国粋」と「宗教」
八 原理主義革命の行方
九 「共感共苦」という精神
十 官僚制的合理化の“革命”
十一 科学(技術)という「神」
十二 自己肯定の衝動と「原理」

エピローグ <近代>を超えて

あとがき/増補・新版のためのあとがき

索引

 

「産経新聞」 1992年11月4日 夕刊 「石川 好が読む」『原理主義』

本書は『挟撃される現代史』として、ほぼ十年前に刊行された、増補新盤である。現代(つまり近代の政治社会システム)は、過去からと未来からの何ものかによって挟み撃ちされている。何によって挟み撃ちされているのか。それを松本健一は、本書において「原理主義」と名付けたのだった。原理主義といっても、原則が体系化された「原理」ではない。ある感情の「原理」である。その感情を松本は民族のパトリ(原郷)と呼ぶのである。
近代とは何をおいても「国家の時代」の別名でもある。そして「近代国家」は国民の名によって作られたものとされる。国民は法によって支配されかつ、支配する存在と、近代国家では定義される。しかし人間は、法体系が成立するはるか以前より習慣の体系の中で生きてきた。
近代の法体系の中で生きている時間と、習慣の体系で生きてきた時間差は、それぞれの国家や民族によって大きなズレがあるけれど、後者の時間が前者を断然引き離している。それゆえ、近代に(つまりは国家国民支配の形式に)行きづまりを覚えると、決まって、習慣の体系を生きた時間帯(過去)の側からの反撃が始まる。それが近代にとってやっかいなのは、法体系で生きることを前提にしながらも、過去の習慣の体系は、共時的に法社会に侵入しているからである。つまり、法体系は改正改定されても、習慣の体系には変更が存在しないのである。それゆえ、「近代」は、常に習慣の体系によって、おびやかされ、「近代の超克」は、近代の前方に何かが仮構されて、論じられるのではなく、前近代的な習慣の体系によって克服されると、考えられることになるのである。
前近代のなにごとか。それを松本は「原理主義」と呼び、その根源をパトリと断言する。さてそのパトリ(原郷)とは何か。松本は、それを、たとえば土の手触り、砂の肌ざわり、あるいは森の深み、といった、風土に求めて行く。そして、土や砂や森といった原風土の違いによって生み出される文化の差異に着目し、固有のナショナリズムや宗教に考をめぐらせ、あらゆる文化は、ローカルなものであるという、実に平凡な、しかし実に重要な結論に到達する。
松本は近ごろ「世界史のゲーム」を日本が越えるといったテーマで刺激的な文章を書きつづけている。それは、日本文化が、徹底的にローカルなものであり、ローカルな文明は、他者に合わせて生きようとすると断を下し、そこに、世界史という覇権の時代の後の世界を考え出そうとしている。本書は、今日の松本の考え方の、文字通りパトリ(原郷)を実現したものである。
十年前に、今、最も重要な「原理主義」を考えていた松本健一の、これは、早過ぎた本といえる。

  • Facebook
  • Hatena
  • twitter
  • Google+
PAGETOP
Copyright © 株式会社風人社 All Rights Reserved.
Powered by WordPress & BizVektor Theme by Vektor,Inc. technology.