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奥の細道をゆく
21人の旅人がたどる芭蕉の足跡

NHK「奥の細道をゆく」取材班 編

仕様:A5判 並製本240頁
定価:本体1,600円+税
発行:KTC中央出版
題字:平山郁夫
装丁:後藤葉子(QUESTO)
2001年6月17日発行

三百年をへだて、
みちのくに出会う

本書の紹介(本書「まえがき」より)

 本書は2000年4月から放送されたNHKテレビ・ハイビジョン番組「奥の細道をゆく」の全31回を収録したものである。
 元禄二年の春、松尾芭蕉はいっさいの名利を捨て、奥州に旅立った。『奥の細道』は、およそ150日、2400キロに及ぶ旅の記である。
 言うまでもなく、この古典中の古典の冒頭は、有名な一節で始まる。「月日は百代の過客にして、行きかふ年もまた旅人なり」流れ行く時も、人の一生もすべては旅のようなもの??こうしたひとつの死生観とでもいうものが、いつの世から日本人のDNAに組み込まれたのか知る由もないが、そうした精神構造が受け継がれていく過程で、芭蕉が大きな役割を果 たしたことは疑いない。
 折しも世紀の変わり目を迎え、戦後日本がよってきた価値観が見直されつつある。新たな世紀を生きようとする日本人に、私たちがどこから来たのか、改めて考えてもらう一助にならないか。ほぼ一年をかけて『奥の細道』を追体験した私たちの試みは、こうして始まった。
 さらに私たちの思いは、「みちのく」そのものにも飛んだ。300年の時の流れは、当時と同じ風景を止めておくことを許さない。それでも、東北には芭蕉が旅した頃の原風景が残っているように思えて仕方がない。失われつつある豊かな日本や日本人の姿が、東北にある。それを伝えることができたらと願っている。
 この企画を進めていくうえで最も重要だったのは、実際に芭蕉の足跡をたどる「旅人」の存在である。『奥の細道』を現代に照らし合わせ、読み解く人物が必要だと考えたからである。
 「 旅人」をお願いしたのは、小説、詩、漫画、映画など表現のプロたち、そして宗教学、動物生態学、解剖学などさまざまな分野の専門家たちである。私たちはやがて、こうした人たちがいかに芭蕉に高い関心を寄せているかということを思い知らされることになる。
 そして、旅人独自のものの見方が、その専門分野の造詣の深さと相まって、これまでにない芭蕉観なり解釈を生み出していった。定説と比すと賛否両論あると思われるが、それもまた『奥の細道』の偉大さ、奥深さということではなかろうか。
 ともあれ、1689年製のこの上もなく芳醇なワインとも言うべきこの逸品を、当代きっての表現のソムリエたちの含蓄に満ちた言葉とともにご堪能いただければ幸いである。


本書の主な目次

第1旅 深川(東京)・上野(三重)  旅人 森本哲郎
  ふるさと・上野/江戸の住まい・日本橋 静かな暮らし・深川/無常・隅田川/
  旅立ち・芭蕉庵

第2旅 千住(東京)〜室の八島(栃木)  旅人 立松和平
  江戸との別れ・千住大橋/宿場町・草加 春日部・小淵山観音院/歌枕の地・室の八島

第3旅 日光(栃木)  旅人 ねじめ正一
   仏五左衛門・上鉢石町/東照宮の三猿/寛永の御造替 今に伝えられる金具修復の技術/
   陽明門 修験道の霊地・男体山

第4旅 那須野・黒羽(栃木)  旅人 立松和平
   道に迷う・那須野/桃雪と俳人たち・黒羽 光明寺跡/師の庵・雲巌寺

第5旅 殺生石・遊行柳(栃木)  旅人 松本零士
   那須野/高久の宿/幻想の風景・殺生石 歌枕の地・遊行柳

第6旅 白河の関(福島)  旅人 小椋 佳
   境の明神・門前の茶屋/光南高校を訪ねて 白河の関跡

第7旅 須賀川(福島) 旅人 浅井愼平
   交通の要衝・須賀川/奥州最初の歌・田植歌 商家の俳諧・人々の出会い/
   可伸庵・栗の木 阿武隈川・石河の滝

第8旅 浅香山・信夫の里(福島) 旅人 澤地久枝
   浅香山・花かつみ/奥州街道・田園風景/黒塚・鬼婆伝説 信夫の里・文知摺石/
   心のなかに道を持つ

第9旅 飯塚の里(福島) 旅人 里中満智子
   医王寺・佐藤一族の悲劇/飯坂温泉・貧家の宿 厚樫山・伊達の大木戸

第10旅 笠島・武隈の松(宮城) 旅人 安部譲二
   鐙摺・義経のあと/歌枕・武隈の松 悲運の歌人・藤原実方の墓

第11旅 宮城野(宮城) 旅人 河合雅雄
   亀岡八幡宮/画工・加右衛門/宮城野の野守 宮城野のハギ・アヤメ/北の森の優しさ

第12旅 壺の碑(宮城)  旅人 山折哲雄
   多賀城政庁跡/千歳の記念・壺の碑/歌枕・末の松山 奥浄瑠璃・塩釜/
   塩釜神社・和泉三郎の灯籠

第13旅 松島・瑞巌寺(宮城)  旅人 日比野克彦
   神のわざ・松島/禅僧修行の地・雄島 松島の月/奥州名刹・瑞巌寺

第14旅 石巻(宮城) 旅人 大林宣彦
   仙台藩の海運基地・石巻/「宿貸す人なし」の嘘 真野の萱原・北上川/
   俳句文化を継承する登米の人々

第15旅 平泉(岩手)  旅人 森本哲郎
   秀衡が跡・無量光院跡/伽羅御所跡は住宅地に 基衡が跡・毛越寺/
   高館・義経の館 藤原文化の結晶・光堂/衣川古戦場跡

第16旅 尿前の関(宮城)  旅人 篠原勝之
   国境・尿前の関/山脈越えのすごい速さ 封人の家・馬の尿/山脈越えの難所・山刀伐峠

第17旅 尾花沢(山形)  旅人 ねじめ正一
   紅花大尽・鈴木清風/芭蕉宿泊の地・養泉寺 蚕・万葉集/山寺への道・紅花畑

第18旅 山寺(山形)  旅人 浅井愼平
   根本中堂・不滅の法燈/姥堂・奪衣婆 後生車・百丈岩・せみ塚/奥の院・五大堂

第19旅 最上川(山形) 旅人 林 望
   交易の町・大石田/高野一栄の句会 歌枕・最上川

第20旅 羽黒山(山形)  旅人 緒川たまき
   手向・修験者たちの宿/峰入り/石段・杉木立 南谷別院跡/山頂・三神合祭殿

第21旅 月山・湯殿山(山形) 旅人 立松和平
   死者の山・月山/生まれ変わりの道・湯殿山

第22旅 酒田(山形)  旅人 山折哲雄
   鶴岡・出羽の初茄子/最上川河口・初めて見る日本海 酒田・庄内米の集積地/
   日本海の落日

第23旅 象潟(秋田) 旅人 養老孟司
   鳥海を望む欄干橋/象潟島・蚶満寺

第24旅 越後路(新潟)  旅人 辻井 喬
   西生寺・漂泊の僧弘智法印/出雲崎・佐渡を望む港町 佐渡・別離の物語

第25旅 市振(新潟)・越中路(富山) 旅人 吉増剛造
   市振・浜茶屋/遊女の声・萩と月

第26旅 金沢・小松(石川) 旅人 大林宣彦
   金沢・加賀友禅/願念寺・一笑の追悼会の句 小松・ゆく秋/多太神社・実盛の兜

第27旅 山中(石川)  旅人 福島泰樹
   那谷寺・花山法皇の境涯/山中温泉の効 「山中細道の会」の俳人たち/
   曾良との別れ・全昌寺

第28旅 永平寺・福井(福井)  旅人 立松和平
   汐越の松・西行の歌/天龍寺・北枝との別れ 曹洞宗の大本山・永平寺/
   福井・等栽との再会 芭蕉と旅の道連れ

第29旅 敦賀・種の浜(福井)  旅人 日比野克彦
   最後の目的地・敦賀/気比神宮・仲秋の名月と「砂持ち」 芭蕉と月/
   宿に杖を置いていく 色ヶ浜・ますほ貝/本隆寺・等栽直筆の書

第30旅 大垣(岐阜)  旅人 大岡 信
   水都大垣と芭蕉の結びつき/紙衾を弟子に与える 正覚寺・芭蕉塚/兄への遺書

旅に生き・旅に死す−奥の細道・その後 


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