2016年 7月 25日 月曜日

坂井建雄・小林身哉
人、ヒトにであう
−−全国標本展示ガイドブック

発行:風人社
仕様:B6判/並製本/240頁
定価:本体1800円+税

1999年12月20日発行


 

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  本書の紹介

生命科学の進歩に伴い、人体への関心はますます高まってきた。しかし、人体解剖はもとより標本の閲覧も一般 には認められていない。自然生命の神秘に触れ、より深い理解を得るには、できれば身体の客観的体験を一度は持ちたい。本書は、現在日本でこの機会を与えてくれる施設や状況を調査した画期的なガイドブックである。


本書目次


◆第1章 人体を知る …………………………… 坂井建雄

◆第2章 人体を観る …………………… 外崎 昭

◆第3章 人体を科学する
  津山科学教育博物館 ……………………… 森本謙三
  川崎医科大学・現代医学教育博物館  梶田博司
  医の博物館 ……………………………… 西巻明彦
 【コラム】東海大学人体科学博物館を訪ねる   後藤仁敏

◆第4章 人体標本は語る(医学・教育向展示)
  札幌医科大学標本館について …………………… 森恵悧子・佐藤昇志
  東京大学 「医学部標本室」「総合研究博物館医学資料室」 金井克光・神谷敏郎
 【コラム】標本と私  …………………………………  吉田 穣
  東京慈恵会医科大学標本展示施設について …… 竹内修二・石井成克
  山梨医科大学標本館 …………………… 加藤良平・寺田信幸
 【コラム】大学にあるスライス人体  ………… 古川雅子

◆第5章 人体解剖−医学教育の源
  医学部における解剖実習の実際 ………………… 半田康延
  歯学部学生の場合 ………………………………… 高橋常男
  コ・メディカル学生の場合 ……………………… 小林邦彦

◆第6章 標本とは何か …………………………… 増田(北村)弥生

◆第7章 標本はいかにつくられるか
  標本の製作・展示を考えるときに ……………… 尾坂知江子
  プラスティネーションの拓く世界 ……………… 吉田 穣
  川崎医科大学の肉眼標本製作法 ………………… 三宅康之・坂本由美・鐵原恵子・仁科幸子

◆第8章 人体標本は今−全国医系大学の調査から …… 小林身哉

 資料  医系大学における代表的展示物リスト(5例まで)
 全国主要医療関連博物館・資料館マップ


  

 解剖学者の藤田恒夫さんが編集・発行している、インテリジェンスに非常にエキサイティングな雑誌があります。『ミクロスコピア』(発行:ミクロスコピア出版会 tel 025-227-3150/発売:株式会社考古堂 tel 025-229-4050)です。
その Vol-17.No3の「自著自賛」に本書の紹介があります。本書に関心のある方には非常に参考になりますので、藤田さんに 許可を いただき、転載させていただきました。

 

 発行までの歩み(小林)
 人体標本に限らず,いま多くの大学で建物改築や講座新設のあおりを支けて,貴重な標本・資科の存在が危うくなっています.私の所属する名大も同様で,標本展示室担当として人体標本とさまざまに向き合う中で,標本の声が聞こえるような気がしました.「もっと役に立ちたい,もっと光をあててほしい」と….科学館学芸員の助言も受け,標本展示室の整備を始めたのですが,他の大学での標本の保存展示の現状を知りたいと思っても,その方法がわかりません.
 それで,解剖学会総会にあわせて標本展示懇話会を私たち二人でたちあげ,各大学の標本展示活動の交流を行なうことになりました.まず全国の医科系大学での人体標本の保存や展示の実態を調ベ,昨年3月に報告書をまとめました.この調査を進めるなかで,標本展示,標本活用の大切さが浮き彫りになり,反面 ,人体標本の危機的状況も明らかとなりました.標本展示に関するガイドブックを作って,人体標本の保存・展示の重要性を広め,医療人の解剖の勉強や小中高生の人体構造の理解にも役立てよう,という話になったのです.

 ガイドプックの誕生(小林)
 さて,いよいよ編集です.発行元の風人社社長,大森誠さんの助言を受けながら,まず,この本の目的,誰を対象とするか,を考えました.一般 の人の身体認識を深め,死や生を包含する「わたしのからだjを良く理解する助けとなるような本,中学生でも訪れることが出来る展示館から,専門家が特定の目的で利用する施設まで紹介しよう.
 一般向けの展示館としては,津山科学教育博物館が紹介されています.ここには創立者の内臓が遺言により展示されています.川崎医科大学現代医学教育博物館は年間の予算規模も大きく,多くのスタッフが現在も標本作製に力を入れているところ.日本歯科大新潟歯学部内にある「医の博物館」は,日本海に面 した松林の中にある癒しの空間です.医療人向けの大学の施設としては,札幌医大標本館,山梨医大標本館,慈恵医大標本展示施設が紹介されています.この道ひとすじに人体標本を作ってきた方々の苦労を展示内容から偲ぶことが出来るでしょう.東大医学部標本室には歴史の重みを感じさせる標本がたくさん所蔵され,展示されています.残念なのは,この標本室に長く勤務しプラスティネーション標本の作成と普及に情熱を傾けてこられた吉田穣さんが,この本の完成を見ずに急逝されたことです.彼は病魔との戦いの中で,「標本と私:吉田穣」の章に最後のぺンをとりました.
 巻末には,全国医療系博物館,資科館マップが載っています.施設の住所,電話,FAXに,交通 手段まで詳しく記されています.これを見て多くの方々が訪問し,貴重な資科にあついまなざしを向けてほしいと心から願います.標本や資科は,そのまま未来へのメッセージです.

「片棒」からのコメント(坂井)
 小林さんとの協同作業では,小林さんの積極的なのをいいことに,その尻馬に乗るようにして,また時々は私の方から方向性を提案し,新しい局面 を切り開くよう心がけ,そんなことを続けてきた成果が,この本です.2l世紀に向かって,国立大学は足下を揺さぶられ,解剖学はと言えば医学生物学の進歩にキャッチアップする悪戦苦闘の真っ最中,そんなおりに,標本展示に気を配るような酔狂なことをやっていられるか,といった了見の狭いことを言っていると,ますます窮地に陥ってしまいそうな気がします.解部標本や解剖実習と向かい合いながら,今一度自分の足下をにらんで,解剖学の存在する意義を見つめ直してみたい,それが,私たち二人の共通 の願いなのです.

こばやしみや  名古屋大学大学院医学研究科助教授.解剖学講座は今や機能形態学講座と呼ぱれています.形態学は形から本質を明らかにする手法.美しい形にこそ物事の本質があると信じ,皮膚の免疫系細胞や造血系細胞,コラーゲン細線維の横紋や分子の構造まで,微細なつくりを追い求めています.

さかいたつお  順天堂大学医学部教授. 1978年 東京大学医学部医学科卒業.同大学助手,助教授を経て,現在順天堂大学医学部解剖学第一講座教授.大学での最重要の仕事は,人体解剖実習を中心とした学生教育.研究領域は,腎臓と循環系の微細構造と細胞生物学.趣味は人間と人体の歴史を繙くこと.著書『からだの自然誌』東京大学出版会(1993),『人体は進化を語る』ニュートンプレス(1998),『人体解剖のすべて─解剖学への招待』日本実業出版社(1998),『謎の解剖学者ヴェリサリウス』(1999)など.

   


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