弊社発行『ホントに歩く大山街道』、『キャーッ! 大山街道!!』の著者、中平龍二郎さんが、2019年10月11日、肺がんで、逝去されました。昨年6月に肺がんが判明し、その後、薬物療法での闘病を続けられましたが、本年(2019年)8月末から病状が悪化し、回復に至らなかったと、奥様からのお電話でのお知らせを受けました。
ご本人は「必ず治る」と確信されて、ご家族以外には病気のお知らせをなさりませんでした。弊社でも、病状のお尋ねを控えて参りましたが、恒例の中平さん講演会の代役に弊社編集部小菅が担当することになり、そのご連絡で小菅がお便りをさしあげましたときに、私(弊社代表・大森)も中平さんあてのお見舞い状を差し上げました。
そのご返事で、10月9日に奥様からお電話をいただき、中平さんの病状が重篤であることを知りました。その2日後の11日にご逝去されたことを、家族葬を終えられた後の15日に、再びのお電話で知った次第です。
中平さんとは、仕事の関係以前から、個人的繋がりで存じ上げており、雑談を交わしているうち、中平さんが何か本を出せそうな経験の持ち主であり、話題も豊富なので、いくつかの本に出来るテーマを提案してもらったことがありました。
その中の一つに大山街道があって、私はこれを選んで、中平さんと検討することになりました。その後の刊行に至った事情、中平さんが以前からどのように大山街道に興味を抱き、のめり込んで行って本を出すまでにいたったかについては、『ホントに歩く大山街道』の「まえがき」に、私の提案から実際に刊行が実現するまでのプロセスについては「あとがき」に記されているので、ご関心ある方は、本書をご覧いただきたい。
大山街道の現調(現地調査)は、中平さん、私、小菅の3人に、ときたま、武揚堂の中平さんの元部下の方もご一緒されたこともありました。中平さんは、武揚堂の大編集長で、退職後も武揚堂の仕事の相談に乗っておられました。
私たちは、初めて、明治時代の帝国陸軍参謀本部陸地測量部の迅速測図という地形図の利用法を中平さんから教わりました。国土地理院の1万分の1現代地形図に、同縮尺に拡大した迅速測図を並置した地図を手にして現調しました。
現在、弊社で刊行中の「ホントに歩く」シリーズは、この方法が原形です。中平さんから教わったことは、計り知れません。その教えを活かして、現在、私たちは仕事をさせていただいています。大山街道は、それまで類書がほとんどなかったこともあって、初刷りは瞬く間に完売しただけでなく、現在も、この街道ガイドのバイブルとして、利用され続けています。中平さんの功績に大きなものがあります。
弊社では、大山街道のマップ制作・刊行を出発点に、東海道53・57次を1万分の1地形図の繋ぎで完成し(『ホントに歩く東海道』)、現在は、同様の『ホントに歩く中山道』を継続刊行中です。中平さんに、感謝の念を捧げずにはおられません。
中平さんが、病名を告げられてから、家族以外に病状を知らされなかったのは、たぶん病を克服して、まだやり残している夢がおありであったために違いありません。中平さんの悔しさはいかばかりかと想像されます。今は、おそらく苦しかった闘病を終えられて、ご冥福をお祈りしたいと思います。
中平さんの事業、功績は生きています。私たちは、しっかりと私どもの命ある限り、引き継いでまいりたい思っています。中平さん、ありがとうございました。
2019年10月17日記
(OH)
中平さんの著書『ホントに歩く大山街道』『キャーッ! 大山街道!!』の紹介ページを集めました。
http://www.fujinsha.co.jp/tag/oyama-review/

2007年9月18日の「朝日新聞」(神奈川版)での紹介記事。ものすごい反響でした。写真の鷺沼の文華堂さんは大山街道沿いの書店ですが、廃業され、時の移ろいを感じます。
中平様のご冥福をお祈りいたします。
私は ホントに歩く大山街道 の本を溝の口の大山ふるさと館で購入して、友人3人とお揃いのTシャツまで着て 二年前に歩きました。
本は、写真や距離、周辺情報まで詳しく書いてあり どれだけ助かったか…。大山街道歩きの時には、お守りのように持ち歩きました。
歩く前に予習で読み、実地で見て、復習して見て 本のおかげで本当に大山街道歩きを楽しめました。ありがとうございました。
コメントをありがとうございます。
多くの読者、ウォーカーがともに歩いてくださり、中平さんも喜んでいらっしゃると思います。
風人社
中平様のご冥福をお祈りいたします。
世田谷、青葉台の講座でご一緒に歩きました。
大山街道の東海道からのコースも、全て著作のガイドで歩きました。
ありがとうございます。
伊藤さん、ありがとうございます。東海道からの「キャーッ! 大山街道!!」のコースを歩かれて、素晴らしい。
いいコースですよね。私には、現調の思い出がたくさんあります。
「大山みちの会」で中平さんとご一緒させていただきました。大山みちの会入会のきっかけは、中平さん著作の『ホントに歩く大山街道』を手に大山街道を歩いたことがご縁となっています。
個人的に大山道をはじめ旧道と云われる道を歩き、文化財を見て歩きましたが、道標に記された文字と地域性が一致しない時などは中平さんにメールで教えを請いていました。
昨年、9月19日に同様のことでお尋ねしたところ、翌日の返信の末尾に「・・・確答出来ず申し訳ありません。お元気でお過ごし下さい。」と記されていました。いつもは「お元気で・・・」という言葉を聞いたことがあませんでいたので、何か心に引っかかるものがありました。
今に考えると、その言葉には中平さんの深刻な思いが込められていたことがあったのですね。
いつも親切に相手をして下さった中平さんのご冥福を心からお祈り申しあげます。 合掌
コメントをありがとうございます。中平さんの著書がきっかけになったのは、すばらしいですね。
どんな方にも真摯に対応されていた姿を思い出しました。
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